光文社古典新訳文庫の創刊5周年を迎えて
光文社古典新訳文庫も、無事5周年を迎えることができました。創刊以来、たくさんの方々から温かいご支援をいただいてまいりました。この場を借りて、改めて厚く御礼申し上げます。
この5年間には、歴史を画すような出来事がありました。2008年のリーマンショック、そして今年は、東日本大震災と原発事故。世界に目を転じれば、ギリシャに始まった金融危機はついにアメリカの国債の格下げにまで至り、基軸通貨としてのドルの信認も揺らいでいます。また中東では民衆の蜂起を新しいメディアが拡大させています。
まさに、このような時代にこそ、人々は古典に帰るのではないでしょうか。編集部も文学はもちろん、哲学、社会科学、自然科学の新訳に力を傾注してまいりました。どうぞ既刊のリストをホームページでご覧になって、新たな古典体験をしていただきたいと思います。
これからも初心を忘れずに、常に驚きと感動に満ちた大胆な新訳を提供してまいります。今後とも光文社古典新訳文庫にお力添えをよろしくお願いいたします。
光文社翻訳編集部 編集長 駒井 稔



長い年月をかけて世界中で読み継がれてきたのが古典です。奥の深い味わいある作品ばかりがそろっており、この「古典の森」に分け入ることは人生のもっとも大きな喜びであることに異論のある人はいないはずです。しかしながら、こんなに豊饒で魅力に満ちた古典を、なぜわたしたちはこれほどまで疎んじてきたのでしょうか。ひとつは古臭い教養主義からの逃走だったのかもしれません。真面目に文学や思想を論じることは、ある種の権威化であるという思いから、その呪縛から逃れるために、教養そのものを否定しすぎてしまったのではないでしょうか。
いま、時代は巨大な転換期を迎えています。まれに見るスピードで歴史が動いていくのを多くの人々が実感していると思います。
こんな時わたしたちを支え、導いてくれるものが古典なのです。「いま、息をしている言葉で」――光文社の古典新訳文庫は、さまよえる現代人の心の奥底まで届くような言葉で、古典を現代に蘇らせることを意図して創刊されました。気取らず、自由に、心の赴くままに、気軽に手に取って楽しめる古典作品を、新訳という光のもとに読者に届けていくこと。それがこの文庫の使命だとわたしたちは考えています。


