『自由論』読書会が国立市公民館で行われました - 光文社古典新訳文庫


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『自由論』読書会が国立市公民館で行われました

国立市公民館で1月16日から5回連続で『自由論』(ミル/山岡洋一 訳)をテキストに「哲学講座 長谷川宏さんと読む一冊」が開催されました。 哲学者の長谷川宏さんと約30名の受講者のみなさんが『自由論』を読み込むという読書会形式の講座です。

この講座を主催した国立市公民館の井口啓太郎さんからレポートをいただきました。

「思想(哲学)が日常生活と密接に関わっていることがよくわかりました」。

p_iguchi.jpgJ.S.ミル『自由論』(光文社古典新訳文庫版)をテキストに、解説を書かれた長谷川宏さんを招いて行われた講座の参加者が、感想として記した一言です。

国立市公民館が主催した本講座は、2005年から毎年、哲学者の長谷川宏さんを招き、「哲学講座 長谷川宏さんと読む一冊」と題して読書会形式の講座を開いています。今年は1月16日から2月13日までの毎週土曜日全5回、テキストはミル『自由論』でした。講座の参加者は30名弱の国立市民一般で、一冊の本を複数回に渡り"共同で読む"、こうした特徴が一般的なイベントなどとは異なる点ではないでしょうか。


講座はいわゆる読書会の形式で進められます。参加者全員は5章だての『自由論』を毎回1章ごとに読み進め、各回にはその内容をまとめ、補足的に解説したり、感想を述べたりするレポーターを参加者から募ります。参加者は比較的中高年世代が多く、レポートは自身の体験を戦後思想史の関わりから述べられたり、自らの解釈を展開されたり、時に原著にあたって訳自体を検討することも。大学でのゼミナールさながら、熱心な発表が続きました。

参加者の質問や感想は脇道に逸れることもしばしばですが、長谷川さんは丁寧かつ的確に、次の思考への展開を促すコメントと解説を挟みながら、"共同で読む"時間を構成します。ヘーゲルをはじめとする哲学研究の大家である長谷川さんが一方的に講演する形式もあり得ると思いますが、長谷川さんはこうした講座の運営について、「ここならこの方が面白いでしょ」と言いながら、包容力のある対話的な空間をつくります。スピーカーが壇上にいるのではなく、助言者ともいうべき長谷川さんを囲んで輪読する、そんなイメージの読書会になりました。

『自由論』は、光文社の読みやすい新訳版によって一般的な読者も手に取りやすくなりましたが、19世紀ヨーロッパの市民社会の課題を俎上に載せて自由に生きるという普遍的な主題に迫る社会哲学の古典を、咀嚼して自分のものにするのはやはり困難がつきまといます。
一人で読むだけでなく他者と共に読んでみる、そして哲学が実は日常の社会生活と密接に関わっていることに気づいていく。冒頭の感想はそんなプロセスを辿った言葉ではないかと思います。

講座は5回で終わりましたが、「哲学読書会」という自主サークルも発足しており、語る言葉と思考の水準を高める不断の学習が、公民館での月1回の活動を通じて続けられています。

身近にある各地域の公民館は、そんな大人の学びの場と機会を、権利として(原則無料で)公的に保障する教育機関です。来年も「ちょっと難しいけど挑戦してみたい」、そんな本を取り上げて、"共同で読む"公民館講座を開催したいと思います。

国立市公民館 井口啓太郎



「古典は、手にしたときが新刊です。」

長谷川さんの読書講座に僕も参加しました。井口さんのレポートにあるように、毎回、1章ごとに2,3人の方がレジュメを作り、内容をたどりながら自身の感想や意見を発表していくスタイル。"まさか自分は当たらないよね"と思いながら、身をすくめながら......(笑)。
「中町さんもいらっしゃいよ!」
終了後にお話を聞いた女性からのお誘いにドギマギ。誘っていただいたのは、最初の講座終了後(5年前)に自主的に読書サークルを立ち上げた50代の女性。
「哲学科を出てはいるけれど、50を過ぎて古典が読みたくなったんです。会社や家でそんな話はできないし、したらしたで、なにしゃべってるの?ってなりますよね(笑)。哲学や思想の話が自由にできる場を、自分の感想や意見を言い合える場をと思って仲間を募りました。14,15人くらいかな、男女半々くらい。毎月1回、土曜日の午後1時から5時でやってます。1冊の本を年に12回で読むんです。丸山真男やウェーバー、長谷川さん訳のヘーゲル『歴史哲学講義』もやりましたよ」。
講師の長谷川さんのアドバイスも取り入れて、ルソーの『社会契約論』などをみんなで読んだという。素晴らしい!
カルチャーセンターなどにも通ったことがあると言うけれど、いわゆるお勉強講座、カルチャー好きという感じではなく、読んで語り合いたいという素直な思いを仲間同士で共有している。そんな印象を受けました。

もう一人は70代の男性で、300世帯のマンションの管理組合の役員をされているそうです。
「ミルの自由主義的考えに興味があって、公民館の催し案内を見て参加しました。晩年に書かれた『自由論』が、当時の社会主義思想とどのような結びつきや、関係性があるのかとか、それとドイツ観念論ではなくイギリス経験論にも興味がありました。管理組合をやっていて世間の目というか、他人のことを気にしてます。例えば規約を作る際に、ほかの人々がどんなふうに考えて、どう反応するのかが気になるんですよ。『自由論』に書かれている思想と言論の自由とか、個人に対して社会はどれだけ関わることができるか、今の仕事を考えるうえでも参考になるかな、とも思ったんですよ」。
思想や哲学を生活の場から捉え、学び、自分のものとしていく姿勢。こういう読者に支えられていると実感! 
まさに「古典は、手にしたときが新刊です。」

光文社翻訳編集部 中町


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2010年2月26日 光文社古典新訳文庫編集部 |


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