高遠弘美さん--産経新聞夕刊(大阪版)連載 第47回「プルーストと暮らす日々」 - 光文社古典新訳文庫


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高遠弘美さん--産経新聞夕刊(大阪版)連載 第47回「プルーストと暮らす日々」

産経新聞(大阪版)の夕刊文化欄で連載中(毎週木曜日掲載)の高遠弘美さん(『失われた時を求めて』『消え去ったアルベルチーヌ』の翻訳者)「プルーストと暮らす日々」の第47回をお届けします。

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プルーストと暮らす日々 47

昨年、縁あって、日本で初めて個人全訳を成し遂げた井上究一郎訳『失われた時を求めて』の原稿の一部を入手し、そのことをこの連載で書いたことがある。それをお読み下さった井上氏のご息女(金沢公子成城大学名誉教授)から感動的なお便りを頂いた。

数年前にご親族が家を建て替えたときにいつの間にか散逸した一万五千枚に及ぶご尊父の訳稿がこのところ一気に集まり、私ともうお二人の手許(てもと)にある分は別にして、あとは「花咲く乙女たちの蔭に」を除いて残りすべてを金沢先生が無事に買い戻されたという。

「まるで八犬伝の玉の運命のよう」だとご友人から言われたとお便りには書かれていた。私には浄書原稿としか思われぬほど美しい書体で書かれた訳稿は「鉛筆で直接書いていった最初の草稿」ということで、それからしても、井上訳個人全訳がどれほど丁寧になされていたかがわかる。

一九七二年十二月に刊行されたアンドレ・モーロワ著『プルーストを求めて』(井上・平井訳)を、まだ大学三年生だった私は発売直後に買っているが、その奥付の訳者紹介には『失われた時を求めて』翻訳のことは書かれていない。井上訳個人全訳の筑摩世界文学大系版第一巻が出たのが翌年の七月だから、モーロワの訳書が出た頃はまさに全訳を目指して日々『失われた時を求めて』に向かっていらしたのだと思う。

井上訳草稿を入手したお一人は「プルースト事典編纂(へんさん)室」という有志のグループのメンバーである。金沢先生のご紹介で、その方から同編纂室による『マルセル・プルースト/井上究一郎訳「失われた時を求めて」登場人物事典』(二〇〇四)を頂戴した。

井上訳に添いながら、おもな登場人物について詳しく記した四百ページを越える労作で、こういう本を自費刊行で出すという熱情にまずもって打たれる。

プルーストにはそれだけの力がある。プルーストの魅力にとらわれた経験を持つ方なら、登場人物事典まで出してしまうという、とてつもない無償の情熱に深い共感を覚えることだろう。
(2012年4月12日 産経新聞(大阪版)夕刊掲載)

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2012年4月19日 光文社古典新訳文庫編集部 |


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