002カフェ光文社古典新訳文庫: 2009年10月アーカイブ

光文社古典新訳文庫の翻訳者の方々にとっておきのお話を語っていただく「カフェ光文社古典新訳文庫」。第6回は東京外国語大学長の亀山郁夫さんを迎え、全3巻の画期的な新訳を完結した『罪と罰』について語っていただきます。
 「偶然」によって殺人へと導かれる主人公ラスコーリニコフ。神が仕組んだ「運命」と対峙しようとする彼の「意志」。神に見捨てられた孤独な人間はいかに救われるのか。ドストエフスキーがこだわり続けたこの作品の隠れた主題を探り、『罪と罰』が問うもの、その現代性を考えます。 トークイベント終了後、亀山さんのサイン会を行います。

「棺」から蘇る  ドストエフスキー『罪と罰』の現代性


日 時:10月30日(金) 19時~21時            
会 場:ブックファースト新宿店 1F ブルースクエアカフェ内イベントスペース


問い合わせ:ブックファースト新宿店  TEL:03-5339-7611(代表)
      東京都新宿区西新宿1-7-3 
      モード学園コクーンタワー 地下1階・地下2階
      (営業時間10:00~22:00)

■参加ご希望のお客様は、ブックファースト新宿店・地下1階Dゾーンレジカウンターにて整理券(無料)をお受け取り下さい。先着40名様にお配りしています。

■講演会終了後、サイン会を行います。亀山郁夫さんの著作、または翻訳本であればどの書籍でもご参加頂けます。

cover85-01.jpg罪と罰 3<全3巻 最終巻>
ドストエフスキー/亀山郁夫 訳 定価 920円(税込み)

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5月から毎月開催している〈カフェ光文社古典新訳文庫〉も、はや5回目となりました。
9月27日(日)14:00から開催した第5回は『種の起源』の翻訳者・渡辺政隆さんをお迎えし、

ダーウィン『種の起源』「ダーウィンの散歩道~進化論の生まれた場所」と題して、"ナチュラリスト" ダーウィンの生涯を中心にお話をしていただきました。

/P1020005-1.jpgチャールズ・ロバート・ダーウィンは、1809年にイングランドに生まれ、ダーウィンの生誕200年にあたる今年は、イギリス、日本でも記念イベントが数々行われています。

『種の起源』が出版されたのは1859年。ダーウィンが50歳の時。初版1250部は出版してすぐに完売し、その後ミスを訂正したり、批判に対応して新たに章を加えたりして、存命中に六版まで重ねたという。(※今回の新訳は、初版をもとにしています)

/P1020009.jpg祖父、父ともに医者で、母方の祖父はウェッジウッドの創始者という恵まれた家に生まれ、ダーウィン自身も医者になるべくエジンバラ大学へ進むが、解剖ができず、退学。
牧師であればナチュラリストとして生きていけるのでは、とケンブリッジ大学へ進み、卒業した22歳の時にビーグル号の航海に同乗しないかという話が舞い込む。全く無名だった青年が、航海先から送った膨大な標本と観察日誌が評判となり、帰還後は一躍、学界の寵児となっていた。その時、ダーウィン28歳。航海で目にした熱帯、不思議な生きもの、化石などなどに歓喜し、生命はすべて神が創造したものという創造説に疑念を抱いて下船していた。


/P1010989.jpgその後結婚し、ロンドンから郊外のダウン村に移住し、家族に囲まれ穏やかな生活をしながら研究と執筆に打ち込み、20年以上の年月をかけて『種の起源』を出版した。
そして、『種の起源』を出版した後、英国科学振興協会で論争が起こったが、最期は歴代の国王が眠るウェストミンスター・アビーに埋葬(ニュートンのお墓の隣)された。
生涯、職業はなく、カントリージェントルマンとして生き、研究と執筆に没頭した人生を生家の写真やダウン村の家、書斎、家族の肖像、華麗な家系図(ウェッジウッド家から経済学者ケインズにまでつながる!)など、ダーウィンの人となりを作った背景とともに、お話は進みました。

/P1010965-1.jpgなぜ、生物はこんなにたくさんいるのか、なぜ自分たちはここにいるのか、という疑問から出発し『種の起源』を書き上げたダーウィン。
「その偉大さは、『人間はチンパンジーから進化したのではなく、共通の祖先から枝分かれしてきたのであって、進化は進歩ではない』と考え、進化論を科学である「進化学」にしたこと、進化のメカニズムとして自然淘汰説を提唱したこと、そして生態学、行動学につながるアイデアを記したその先見性にある。」と渡辺さん。「偉大な思想家であり、科学者だ。」と。


お話を聞きながら、なんていい人生なんだろう、としみじみ思いました。まわりにちょっと流されたり、壁にぶつかりながらも、最終的には自分の意思と希望を貫くと同時に、運命の采配にも恵まれていた人ではないでしょうか。

/P1010942-1.jpgそれから、約半数の国民が創造論を信じているアメリカで、科学教育を推進するための
"プロジェクト・スティーヴ"という運動があるそうです(科学者のスティーヴン・ジェイ・グールドにちなんで)。世界中のスティーヴさんに、進化の勉強は大切だという署名をしてもらうというもの。ホーキング博士も署名済み。そして生誕200年の今年、署名は1000人に達し、1000人目のスティーヴさんが生物学の先生をしているスティーヴ・ダーウィンさんだった!


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種の起源(上)
ダーウィン 作/渡辺政隆 訳
定価880円(税込み)

※下巻は12月発売予定です。

P1010871.jpgカフェ光文社古典新訳文庫の第4回(8月22日(土)13:00〜 青山ブックセンター本店にて開催)は、『初恋』(トゥルゲーネフ)の翻訳者・沼野恭子さんに「花かダンゴか――19世紀ロシア文学における恋と食べ物」と題して、ロシア文学の代表的作家とその作品をあげて、恋とダンゴ――精神と物質に対するそれぞれの描写についてお話いただきました。

花派のトゥルゲーネフ ――『初恋』。
恋については饒舌に語るけれど、ダンゴについてはほとんど言及されていない『初恋』。物質的なものよりも精神的なもののほうが大事、という典型的なロシア知識人であるトゥルゲーネフは、あまりにも食べ物に関しての表現が陳腐で、食べ物のことを小説に持ち込むことに抵抗感があるのではと思うほど。

P1010871.jpg一方、強力なダンゴ派はゴーゴリ
ロシア文学最高最強のグルメ文学である『死せる魂』では、食道楽小説と言えるほど、食についての描写は詳細に書き込まれ、匂いがするほどなのに、恋についての描写はあっさり。実は、ゴーゴリ自身、女性が苦手だったらしい。

トルストイ――『アンナ・カレーニナ』
アンナと恋に落ちるリョーヴィンとアンナの兄ヴロンスキーは、精神主義VS物質主義の象徴として対照的に描かれる。トルストイ自身、厳格なロシア正教信者で権力を認めず、後には肉食も絶ったことから、リョーヴィンはトルストイの分身と言われる。

"花"と"ダンゴ"を時間軸で分けて描写したのが、ゴンチャロフ――『オブローモフ』
沼野先生が傑作と絶賛された"グルメ作品"です。

P1010871.jpgそして、ダンゴが花に変化した、チェーホフ『犬をつれた奥さん』
花=精神派の存在である女性=アンナを理解できない、ダンゴ=物質派の存在としての男性だったグーロフが、40才を過ぎて初めての恋を知り、成長し変化していく。
最後二人はどうなったか、チェーホフは描かないまま、判断を読者にゆだねて終わる。

「たとえいくつになっても、恋をして人は変われる、人間的に成長できる、ということを信じられたら、それはとても素敵なこと」と、沼野先生。
チェーホフの余韻のあるラストとこの言葉を受けて終わった今回のカフェ。
じんわりあたたかい気持ちになりました。
恋と料理、どちらも人生を慈しむには欠かせないものですね。

当日、偶然このイベントを知って参加してくださった男性(30代・公務員)は、終了後早速、『初恋』と沼野先生の近著『ロシア文学の食卓』(NHKブックス)を手に取って、
「文学はちょっと敬遠していたところもあったけれど、お話を聞いて読みたくなりました。実は文学というのは俗っぽいところもあって、普段の生活の延長線上にあるものかも、と感じました。」

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初恋
トゥルゲーネフ/沼野恭子 訳
定価440円

 

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