2011年7月アーカイブ

産経新聞(大阪版)の夕刊文化欄で連載中(毎週木曜日掲載)の高遠弘美さん(『失われた時を求めて』『消え去ったアルベルチーヌ』の翻訳者)「プルーストと暮らす日々」の第11回をお届けします。

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プルーストと暮らす日々 11

萩原朔太郎の詩「旅上」冒頭「ふらんすへ行きたしと思へども/ふらんすはあまりに遠し」を教えてくれたのは亡母である。大正末期に出た詩集に載ったこの詩を母はどんな思いで覚えていたのか。しかし、この一節は長い間ほとんどの日本人に共通する思いを歌ったものでもあった。


現に、仏文科の大学生から大学院生だった一九七〇年代の私にも、この詩は文字通りの現実を歌ったものとして響いたのである。毎日、辞書を片手にフランス語を読んでいたのに、いつか自分が彼の地を踏む日が来ようとは夢にも思わなかった。当時、フランスへゆくことができたのは限られた人々だった。少なくとも親のいない私にはフランスはいつまでも「あまりに遠い」国でしかなかった。

img_nakayama20110624-01.jpg中山元さんの講座--「自由の哲学者、カント」の第5回は、今週金曜日、7月29日に開催します。

前回6月24日の第4回講座に参加された山下智弘さん(大学2年生)からは次のような感想をいただいています。
今からでも参加のお申し込みは可能です。興味をもたれた方は、ぜひ足をお運びください。

 中山先生の四回目の講演では、感性を扱う「純粋理性批判」と超感性を扱う「実践理性批判」を統一するものとして、また個的な理性の論述である前二つの批判書に対して、社会内での理性の批判としての「判断力批判」においての自由の問題について講演されましたが、二時間以上にわたって密度の濃い解説をされ、非常に意義深い時間でした。

 前半では個人的な感覚の満足である快適さや、理性の判断である善のように選択の余地のないものとは違い、人間の関心とは関係のない美こそ唯一の自由な適意であり、欲望や論理の強制から普遍性をもつ、だからこそ美学的判断力は自由を象徴するものであるということを中心に、美と崇高んいついて解説され、後半では、そのような自由を阻害する欲望の専制から意志を解放する「薫育の道」が、欲望の限りなさや人間の悪の側面からして不可能と考えられる幸福そのものではなく、幸福に相応しい存在になるという、道徳論的な目的の形式を達成することになる----それが目的の連関を作り出す唯一の存在である人間を終着点とした、自然の外的目的の究極の姿であるという議論を解説されました。

 カントの著作は、その文章の難しさに加え、もちろん内容の面でも近寄りがたさを感じさせるものがありますが、既に「判断力批判」を読んだことのある方にとっての解説としてももちろん、私のように、その取っ付きにくさからまだ読んだことのない参加者にとっても、実際に読むにあたっての格好の手引きとなると思います。

 中山先生は、日本語に消化されたわかりやすい訳を用いて、翻訳という形でもカントの思想を非常に近づきやすい形にするべく尽力されていますが、内容面からの解説も、カントの著作に挑戦する意欲をかき立てられる魅力的なものでした。まさにカントの言葉であり啓蒙の標語である、「自分自身の理性を行使する勇気を持て」を実現する一歩であると感じます。残る二回の講演にも期待しています。
[ 山下智弘/大学2年生 ]

また、ドイツ文化センターのオフィシャルブログにも第4回講座の模様が掲載されています。こちらもぜひご覧下さい。

■ ドイツ文化センター オフィシャルブログ


いよいよ残すところあと2回となりました。参加のお申し込みは下記までどうぞ!

第5回 :2011年7月29日(金) 18時〜20時
第6回 :2011年8月26日(金) 18時〜20時
会場:東京ドイツ文化センター図書館(東京都港区赤坂7-5-56)
アクセス:東京メトロ青山一丁目駅 A4出口から赤坂郵便局方面へ徒歩5分
■ 東京ドイツ文化センター>>

《お申込み・お問い合わせ》
参加ご希望の方は、事前の参加登録を下記宛にお願いします。参加は無料です。
●東京ドイツ文化センター図書館 担当:吉次基宣さん
●E-mail: yoshitsugu@tokyo.goethe.org
●TEL: 03-3584-3201

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純粋理性批判 5
カント/中山 元 訳
定価(本体895円+税)

産経新聞(大阪版)の夕刊文化欄で連載中(毎週木曜日掲載)の高遠弘美さん(『失われた時を求めて』『消え去ったアルベルチーヌ』の翻訳者)「プルーストと暮らす日々」の第10回をお届けします。

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プルーストと暮らす日々 10

今では小説は虚構であり、小説に登場する地名をいちいち現実の土地と結びつけるのは邪道だと思っているけれど、若い頃は架空の地名のモデルと言われる土地には一度は行ったものだった。語り手の幼年期の重要な舞台コンブレーの主要なモデルと言われるイリエには二回行ったし、「花咲く乙女たち」と出会う海辺のリゾート地、バルベックのモデルの一つと言われるノルマンディーのカブールにも行った。三十年近く昔の話である。

カブールのグランド・ホテルは一九〇七年以降一四年まで、プルーストが毎年夏を過ごしたホテルで、作品中に描かれるバルベックのグランド・ホテルの主要なモデルとされている。

高遠弘美さん―月刊『ふらんす』6月号での連載--第3回

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月刊『ふらんす』(白水社)で始まった高遠弘美さん(『失われた時を求めて』『消え去ったアルベルチーヌ』の翻訳者)の連載「対訳で楽しむ『失われた時を求めて』  スワン家のほうへ」の2011年6月号掲載分(PDFファイル)をお届けします。(この連載は2011年4月号から全6回の予定です。)


■ 「対訳で楽しむ『失われた時を求めて』 スワン家のほうへ 3」(月刊『ふらんす』2011年6月号掲載)>>


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失われた時を求めて 1 <全14巻>
第一篇 「スワン家のほうへ I」

プルースト/高遠弘美 訳
定価(本体952円+税)

産経新聞(大阪版)の夕刊文化欄で連載中(毎週木曜日掲載)の高遠弘美さん(『失われた時を求めて』『消え去ったアルベルチーヌ』の翻訳者)「プルーストと暮らす日々」の第9回をお届けします。

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プルーストと暮らす日々 9

翻訳する著者の本はできる限り揃えるというのが私のモットーである。

最初の翻訳となったロミ『突飛(とっぴ)なるものの歴史』の場合、訳し始めたときには、ロミがロベール・ミケルの頭文字をとった筆名だということもわからなかった。ロミなる作家がどういう本を書いているのかも不明で、その二十冊近い全著作や雑誌に寄稿した逸文まで蒐(あつ)めるのに十年はかかった。

ひと頃、一年に二度はパリに行っていたことがある。そのたびに、古本屋をしらみつぶしに探してもなかなかロミは出てこない。いかにも重厚な古書店に入って、ロミの本はありませんかと尋ねると、それはいつごろの著者かと逆に聞かれた。

7月の新刊は『人口論』! 本日発売です。

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7月の新刊、『人口論』(マルサス/斉藤悦則 訳 定価(本体 895円+税) )は、本日発売です!

「人口は等比級数的に増加するが、食糧は等差級数的にしか増えない。そして、人の性欲はなくならない。」シンプルな命題を提起し、人口と食糧のアンバランスが生む問題に切り込んで、19世紀の進歩思想に大きな影響を与えた本書は、現在の世界においてもますます輝きを増している。


『人口論』はマルサスが32才の時に出版したもの。それも匿名で。

〈訳者あとがきより〉
マルサスの『人口論』は若々しい天才の作品である、とケインズは評している(ケインズ『人物評伝』)。
『人口論』初版は匿名で出版され、たちまち大評判となった。つまり、たまたま読んだ人がみんな「おもしろい本を見つけた」と思い、その興奮をつぎつぎと口伝えで広めたからである。(中略)
 このおもしろさとわかりやすさは、著者の手持ちの資料の少なさと、それでもあえて言いたいことを言い切る剛胆さによる。したがって、著者がより多くのデータをそろえ、中身を充実させ、自分の名前も明らかにした第二版以降は、むしろその分だけおもしろくなくなる。


この『人口論』の初版が出版された1798年は、フランス革命から10年近く経過した時代。本書の解説で的場昭弘さん(神奈川大学経済学部教授)は、

「1798年に書かれたマルサスの『人口論』も、当時の人類の傲慢な進歩思想に対する警鐘の書として出現した。1798年といえば、フランス革命がもたらした理性の歴史が失望へと変貌していった時代である。(中略)
 イギリスでは、エドムント・バークを代表としてフランス革命に対する嫌悪、とりわけ理性による進歩主義に対する懸念を表明するものが多くいた。そうした人物の一人がマルサスであった。だからこそ、マルサスは19世紀の社会主義者や共産主義者から眼の敵とされるのである。」
そして
「なぜ、マルサス主義の議論は消えることなく続くのだろう。マルサスの言葉のもつ明瞭さにまずその要因があることは間違いない。」
と。

今もアクチュアルな「若々しい天才の作品」を、斉藤悦則さんのクリアな訳文でぜひお読みください!


《プロフィール》

マルサス T.R.Malthus
[1766−1834] 古典派経済学を代表するイギリスの経済学者。父はルソー、ヒュームと親交があり、その影響を受けて育つ。ケンブリッジ大学を卒業後研究員になり、のち牧師となる。32才の時に匿名で出した本書『人口論』(初版)は当時のイギリス社会に大きな衝撃を与えた。その後名前を明かしたうえで第2版を出し、約30年をかけて第6版までを刊行した。39才で新設の東インド会社付属学院の教授に就任、歴史、経済を教える。穀物の輸入自由化をめぐりリカードウとの論争が有名である。著書に『経済学原理』『経済学における諸定義』『価値尺度論』など。

[訳者]斉藤悦則 Saito Yoshinori
1947年生まれ。鹿児島県立短期大学教授。共編著に『ブルデュー社会学への挑戦』。訳書に『プルードンの社会学』(アンサール)。共訳書に『出る杭は打たれる』(レノレ)、『構成的権力』(ネグリ)、『システムの解体』(シャバンス)、『逆転の思考』(コリア)など。

6回連続で開催している中山元さんの講座--「自由の哲学者、カント」。次回(第5回)は、7月29日(金)です。参加お申し込みは下記までお願いいたします。

第5回 :2011年7月29日(金) 18時〜20時
第6回 :2011年8月26日(金) 18時〜20時
会場:東京ドイツ文化センター図書館(東京都港区赤坂7-5-56)
アクセス:東京メトロ青山一丁目駅 A4出口から赤坂郵便局方面へ徒歩5分
■ 東京ドイツ文化センター>>

《お申込み・お問い合わせ》
参加ご希望の方は、事前の参加登録を下記宛にお願いします。参加は無料です。
●東京ドイツ文化センター図書館 担当:吉次基宣さん
●E-mail: yoshitsugu@tokyo.goethe.org
●TEL: 03-3584-3201


第4回講座では、『判断力批判』を中心に美と自由、自然の合目的性とそれがどのように自由と結びついていくかについてお話いただきました。

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カントの『判断力批判』は、美と自然の目的という極めて非政治的なテーマを考察していますが、個人としての人間の理性を問題とするのではなく、複数の人々が社会を形成しながら生きる時、他者のなかの「私」(個人)の判断力がいかにして自由と結びつくのか、について論じています。この点に注目したアーレントは、「『判断力批判』はカントの政治哲学が展開された重要な書物」であると考察しています。そして3つの「理性批判」の中で『判断力批判』は、カントの政治哲学の基本的な考え方が記されているという重要な視点が提示されました。(アーレントの『カント政治哲学講義』)

次回は、ここから宗教論から歴史哲学について講義を展開していただきます。
そして、最終回の第6回では、カントの政治哲学を中心にお話いただく予定です。
『判断力批判』に書かれている "人間の目的" に関する箇所は、政治哲学においても重要な役割を果しているとおっしゃる中山さん。質疑応答の時間もたっぷりありますので、ぜひ、ご参加ください!

■ ドイツ文化センターのオフィシャルブログにも講座の模様が掲載されています。>>

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純粋理性批判 5
カント/中山 元 訳
定価(本体895円+税)

産経新聞(大阪版)の夕刊文化欄で連載中(毎週木曜日掲載)の高遠弘美さん(『失われた時を求めて』『消え去ったアルベルチーヌ』の翻訳者)「プルーストと暮らす日々」の第8回をお届けします。

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プルーストと暮らす日々 8

何かを思い悩むほうでは決してないのに、妙なところで気後れして、あとで悔やむということが私にはよくある。

たとえば、私淑(親炙ではない)していた小説家の石川淳が自作の俳句を記した扇面は、偶然古書店のカタログで見つけて小躍りしたものの、十数万円という値段にどうしても決断できず、三日間悩んだ果てに、清水の舞台から飛び下りたつもりで頼んだところ、すでに売れたあとだった。

どうせ買う気になるのなら思い立ったが吉日。すぐに注文を出すべきであった。


松永美穂さん、永田千奈さん―新刊のお知らせ

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松永美穂さん(『車輪の下で』の訳者)、永田千奈さん(『海に住む少女』『女の一生』の訳者)の新刊のお知らせです。

新潮社のサイトでは、『週末』の冒頭の"立ち読み"や中村文則さんの書評も読めます。

『週末』
ベルンハルト・シュリンク/著  松永美穂/訳
新潮社 2011年6月30日発売
価格:1,995円(税込み)cover_matunaga_201107.jpg

かつてテロリストだった男が、二十年ぶりに出所した週末。

赤軍派テロを首謀した男が、恩赦を受けて出所した。旧友たちの胸に甦る、失われた恋、裏切り、自殺した家族の記憶。あのとき彼らが正しいと信じた闘争は、いくつもの人生を決定的に損なった。明らかになる苦い真実と、やがて静かに湧き上がる未来への祈り――。世界的ベストセラー『朗読者』の著者が描く、「もう一つの戦争」の物語。



cover_nagata_201107.jpg『ヒトラー『わが闘争』がたどった数奇な運命』
アントワーヌ・ヴィトキーヌ/著  永田千奈/訳
河出書房新社 2011年5月23日発売
価格:2,940円(税込み)

『わが闘争』は1925年に世に出てから120万のドイツ人が読んだ。読者はなぜヒトラーの真意に気がつかなかったのか? その思想は今でも生き延びているのか? 資料を徹底的に駆使した名著。

●中日新聞/東京新聞の書評欄で取り上げられています↓ 評者は鈴木直さん(東京経済大学教授)です。記事はこちら>>

読売新聞 本よみうり堂の「本屋さんへ行こう!書店員のオススメ読書日記」(評者:青山ブックセンター 間室道子さん) で、 『マウントドレイゴ卿/パーティの前に』 (モーム 著  木村政則 訳)を取り上げていただきました。

■読売新聞 本よみうり堂 記事はこちら>>

木村政則氏の新訳で注目すべきは会話のたくみさである。人々の機嫌、声の伸びやかさ、震えなどが、地の文を読まずとも伝わってくるようなおしゃべり。モームは「人の裏面を書きすぎる」と批判されたらしいが、彼がもっとも大事にしたのは人々が集まり、生きていれば、どうしたって発生する熱気ではないか。残酷なラストを持つ作品でも、しーんとしない。どこからか、がやがやと人が集まってきて、この事態についてああでもないこうでもないとおしゃべりし合いそうな空気感がある。モームはけっして厭世的ではない。人生は続く、ということを信じていたのではないかと思う。

本書には下記の6編が収録されています。 「ジェイン」 「マウントドレイゴ卿」 「パーティの前に」 「幸せな二人」 「雨」 「掘り出しもの」 ●「マウントドレイゴ卿」 家柄と知性、すべてに恵まれた外務大臣は、自分が見た恥ずべき夢を格下のライバルに知られていると悩んだ末に......
●「パーティの前に」 南方駐在員の夫を亡くして帰国した長女が明かした夫の秘密とは......


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マウントドレイゴ卿/パーティの前に
モーム 著/木村政則 訳
定価 (本体667円+税)

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