将来を嘱望された良家の子弟デ・グリュは、街で出会った美少女マノンに心奪われ、駆け落ちを決意する。夫婦同然の新たな生活は愛に満ちていたが、マノンが他の男と通じていると知り......引き離されるたびに愛を確かめあいながらも、破滅の道を歩んでしまう二人を描いた不滅の恋愛悲劇。
本書の著者プレヴォは、修道院を抜け出したり、手形贋造で逮捕されたり、海外逃亡を繰り返したりと聖職者らしからぬ人生を送った。本作には彼自身の人生が色濃く反映されているものの、彼の生み出したマノンとデ・グリュの純愛物語は永遠の生を得て、いまも人々を魅了し続けている。
アントワーヌ・フランソワ・プレヴォ Antoine François Prévost |
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[ 1697 - 1763 ] フランスの小説家、聖職者。フランス北部のエダンで法律家の家に生まれる。十代で修道院に入るも、ことあるごとに脱走を重ね、それが元で国外逃亡をも余儀なくされる。逃亡中、自らの半生を色濃く反映した長篇小説『ある貴族の回想』を発表、その最終巻に収められた『マノン・レスコー』はヨーロッパ中で一大センセーションを巻き起こした。その後も破産などの理由で逃亡を繰り返すが、多くの小説を執筆し、ラテン語や英語の書物の仏訳によっても文学者としての名声を得た。 |
[訳者] 野崎 歓 Nozaki Kan |
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1959年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授。フランス文学研究のほか、映画評論、文芸評論、エッセイなど幅広く手がけている。著書に『異邦の香り―ネルヴァル「東方紀行」論』『フランス文学と愛』『赤ちゃん教育』『アンドレ・バザン―映画を信じた男』『夢の共有―文学と翻訳と映画のはざまで』ほか。訳書に『ちいさな王子』(サン=テグジュペリ)、『赤と黒』(スタンダール)、『うたかたの日々』(ヴィアン)、『地図と領土』(ウエルベック)、『映画とは何か』(バザン、共訳)など多数。 |