光文社古典新訳文庫 読書エッセイコンクール2016

小・中学生部門 最優秀賞

「手紙」(『あしながおじさん』)

高山寛乃(福岡県立育徳館中学校2年)

私は手紙を書くことが好きです。いつも、手紙を書くときは、「これを相手が読んだらどんなふうに思うだろうか」と、思いながら書きます。

でも、もし、手紙を書く相手を知らないのに、手紙を出さないといけなくなったとしたら、どうでしょう? 私はきっと、何を書けばよいのか迷うと思います。

八月のある日、祖母から本を勧められました。題を見ると、『あしながおじさん』でした。足の長いおじさん…? 最初は不思議に思いましたが、何だかわくわくしてきました。私はとりあえず、読んでみることにしました。それがこの本との出会いです。そして、私に手紙の楽しさを伝えてくれたのです。

ジョン・グリア孤児院の孤児ジュディは、幼い頃から両親を亡くして、ひとりぼっちです。不思議なご縁で、名前を名のらないある人物の援助で、大学に入るようになりました。その人物を「あしながおじさん」と名づけたジュディは、楽しい生活ぶりや勉強のこと、腹が立ったこと、悲しいことなどを、せっせと手紙に書いて報告します。想像力豊かで、ユーモアがあふれるジュディの、大学生活四年間の話です。

私は、この本を読むのが楽しくてたまりませんでした。ジュディが、親しみを込めて、「あしながおじさん」に手紙を書いている様子が、まるで自分のことのようにわくわくしてきます。短い手紙もあれば、長い手紙もあり、いろいろな手紙の形式がありました。日常的なことを書いているのですが、手紙として読むことで、より生活の楽しさが伝わってきました。手紙の力はすごいなと思います。

孤児だったジュディは、今まで自分のやりたいことができませんでした。しかし、大学に入って、「あしながおじさん」から援助を受けるようになったおかげで、いろいろなことができるようになりました。新たな希望をつかむことができたのです。

私はこの本を読みながらも、考えました。私たちはなんと幸せなのでしょう。毎日、おいしいご飯を食べることができて、勉強ができて、遊ぶことも、お風呂に入ることもできます。そして何よりも、自分がやりたいことをできる自由があるのです。

しかし、ジュディのように、毎日決まったことしかできなくて、希望のない孤児だったとしたら、どうでしょうか。そう考えると、私たちはやりは、とても幸せなのです。つまり、みんな幸せが当たり前になっているということです。

人には運命があります。でも、それはみんないっしょではありません。それぞれの生きる場所が違います。中には、悲しい思いで暮らしている人もいることでしょう。当たり前の環境の中で家族に愛されながら日々暮らしている私は、なんと幸せ者でしょう。感謝せずにはいられません。幸せの形はそれぞれ異なります。ジュディは、ジュディの幸せを手紙に書いているのです。

手紙で喜びや希望を伝えることができるのは、すばらしいと思います。

言葉は大切です。姿の見えない、会えることのない「あしながおじさん」に、せつせつと、ジュディは自分の心を書きつづっていきます。今の時代のメールとは、全く重みが違います。文字に込められた思いがあふれます。「あしながおじさん」の心にも、ジュディの思いがほほえましく響いたことでしょう。

また、想像力を働かせることも大切だと思います。もし、相手がわからない人物だとしても、その人のことを想像して手紙を書けば、手紙を書く楽しさがより伝わります。

私は、この本と出会って、本当にいろいろなことを教えられた気がします。手紙を書く楽しさ、幸せに感謝する心、想像力を働かせること…。手紙というものが、何だかとてもすばらしく思えるようになりました。自分の心や相手を思いやる気持ちを文字にすることで、より深く伝えることができます。

今までの私はもちろん、手紙を書くことが好きでしたが、この本を読んでからは、ますます好きになりました。これからも、できるだけ多くの人に手紙を書いて、心の交流をかみしめていきたいと思います。と同時に、何より、私自身の心に感謝の思いが深く刻まれていくことの喜びを重ねていきたいものです。

「あしながおじさん」への手紙は、ジュディにとって、また私にとっても、希望に向かって生きていくみちしるべです。

あしながおじさん

あしながおじさん

  • ウェブスター/土屋京子 訳
  • 定価(本体780円+税)
  • 発売日:2015.7.9