光文社古典新訳文庫 読書エッセイコンクール2016

高校生部門 審査員奨励賞

「翻訳とは何か?」(『故郷/阿Q正伝』)

中澤賢人(東京学芸大学附属国際中等教育学校4年)

本作品は『故郷』の中国語原文が引用されているので、PDFで掲載いたします。


魯迅の「故郷」は一九二一年に書かれた短編小説だ。物語は主人公の「僕」が二十年ぶりに故郷に帰る場面から始まる。故郷はすでに変わり果てていたので、楽しい帰郷ではなかった。引越しのための帰郷だった。少年時代の友「閏土ルントウ」に別れを告げに来たのだが、彼も記憶の中の少年閏土とは違っていた。「僕」の甥っ子「 宏児ホンアル」と「閏土ルントウ」の息子「水生シュイション」の仲は、当時の「僕」と「閏土ルントウ」とまるで一緒だった。だが、二人の将来は「僕」たちのようになるのではないかと物語の結末で暗示されている。この様な絶望しながらも微かな希望を持つという明るくない難解な気持ちを表現してるのは、まさに最後の有名な一節だ。

しかし、私はここで注目してほしいのは、魯迅の文学世界をどう解読すべきかではなく、藤井省三訳の「故郷」と中国語・日本語ネイティヴな私が読んだ原作の「故郷」との表現的なギャップだ。より浮き彫りするため、竹内好訳の「故郷」も合わせて比較する。

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「翻訳とは何か?」中澤賢人(東京学芸大学附属国際中等教育学校4年)PDFファイル

故郷/阿Q正伝

故郷/阿Q正伝

  • 魯迅/藤井省三 訳
  • 定価(本体780円+税)
  • 発売日:2009.4.9