マルクスは新しい!:

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国立市公民館の『経済学・哲学草稿』の読書会に参加して〈1〉

1月8日(土)から国立市公民館で行われた "哲学講座「長谷川宏さんと読む一冊の本」"(全5回/毎土曜日)の参加者のレポート第一弾です!

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大学の時、マルクスの本からの抜粋箇所を読んだ覚えがある。疎外、階級闘争、剰余価値、再配分、唯物史観、どれも自分からは遠い単語だった。ただ、その時の先生がマルクスはちょっと読んでも意味がない、それでも、読まないより読んだほうがよいと言われたのが記憶に残った。今回、その言葉に後押しされ、読書会に参加することにした。

マルクスをよく知っている参加者も多く、知識のない私は何度も読み直した。この本は明快な部分から突然難解な部分に飛び、なぜそういう展開になったのかよくわからないという難しさがあった。3回読んでも4回読んでも解らないところは解らない。だが、「社会的存在としての人間」を4回目に読んだ時、突然、本が頭にではなく心に響く言葉となった。最初からいっきに読み直した。私有財産、市場経済について理解できない記述も、煙に巻かれたように意味不明で何度も読み直した箇所も、スーッと読み進むことができた。前より理解ができたというのとも違う。ただ、本が自然に語り始めた。実際マルクスが熱く話す声が聞こえてくるような場面もあった。働くとは本来自然と共に豊かに生きること。労働は人を成長させるらしい。人が社会的人間としてよりよく生きることを可能にする労働が本来の労働なのでは。今のままじゃダメだ。本当? 本気? なぜ?と尋ね、そうかと溜息する。何を読んでも、何を聞いても、疑いを持つこと、先を、裏を読むことに慣れた自分がいる。そこに、読まれることを想定していないからか、無防備とも思えるマルクスが直球を投げてくる。若いマルクスの情熱と真摯さに、襟を正される思いがした。

先生を囲んだ夜の会で、先生が「人間は過ちをおかすが、軌道修正する力もあると思う。その意味で人間を信じている」と言われた。私も同感だった。マルクスも、物事を正す力が類として成熟した人間の本質にあると考えていたのでは、と思った。類としての本質を発揮できる社会の構築を心から望み、急務と考えたマルクス。楽観的、理想主義的と思う一方、類的人間を信じる気持ちに共感できる気がしてきた。

マルクスから約130年。その間にマルクス主義は敗退、資本主義は問題を抱えながらも、民主主義を友と呼び突き進んでいる。私たちはマルクスが知らない時代を生きている。だが、日々の労働を通し、社会や自然と関わっていることは変わらない。

『経済学・哲学草稿』を、私は哲学書というより、むしろ分析をさけた小説のように読んだ。正しい読み方ではないかもしれないが、大切な一冊になった。枝葉末節を気にせず読み進んでよいと先生から言われているように思えたのは私の思い込みかもしれないが、この本の力強さを感じ取ることができたのは、大きく、人間的なマルクスをとらえていこうとされた長谷川先生のおかげです。この機会を与えてくださった先生と、公民館に心からお礼を申し上げます。
(50代女性)

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『経済学・哲学草稿』の読書会が国立市公民館で行われました--企画担当・和田正子さんからレポート>>

2011年2月23日 光文社古典新訳文庫編集部 |

『労働者の味方マルクス―歴史に最も影響を与えた男マルクス』橋爪 大三郎/著

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昨年11月に現代書館から「労働者の味方マルクス―歴史に最も影響を与えた男マルクス(現代書館 FOR BEGINNERSシリーズ) が刊行されました。著者の社会学者で東京工業大学教授の橋爪大三郎さんに、研究室でお話を伺いました。

ここ最近のマルクス本の再燃について、どのように見ているかとお聞きすると、

「もう一度読まれているのではなく、いまだマルクスは読まれていない」と。

「1973年(英文原著出版年)に森嶋通夫氏が近代経済学とマルクス経済学を関係づける書物『マルクスの経済学――価値と成長の二重の理論』を発表した。近代経済学が「幹」、マルクス経済学が「枝」と捉えたもので、冷戦時代の東側社会からすれば、社会主義は資本主義の矛盾を克服するものという主張を根本から覆されたに等しい。サミュエルソンもこの仕事の重要性をすぐさま認めたことだろう。東西世界ともこの業績の重要性を理解したはずだが、翻って日本ではどうだったか。取り上げられることもなく、黙殺されたまま現在に至っているのではないか。」

続けて、以前、長谷川宏さんのトークイベントで会場の20代の男性から「希望の哲学は可能なんでしょうか」という質問が出たことがありました。若者が困難を抱えて生きる現在をどう捉えたらいいのか、と伺うと...

「今の若者を覆っているのは、疎外感。会社に帰属することに疑問をもたないから、そこに入れないと疎外感をもつ。帰属することを求めなければ、就職できないという困難を感じても、疎外感は感じない。そもそも個人が実在するのであって、会社は実在ではないのだから。疎外されたと思い、個性が大事と趣味に走ったり、私にこの会社は合わないと自分探しをしたりしても、問題は解決はしない。君はこれをやりなさいと、期待を持って何かを与えられるほうが、実は若者は能力を発揮できる。」

「団塊の世代とその親のライフコースは違った。団塊の世代は自分たちの生き方をパイオニアとして新しくつくってきた。でも今の若者は、おおむね親と同じライフコースをたどる。いや、親のようにさえなれないかもしれない。それなのに親は、自分がたどったライフコースを進むことが正しいかのように、子どもに押しつけている。
また、子どもである若者たちは疎外されているようで、実は親の資産を自動的に相続できる既得権者としての側面もある。」

「マルクスはユダヤ人。ユダヤ人の家庭では"ボスのいない職業につけ"と子を育てる。医者、弁護士、大学教員、起業家。自分自身がボスになるように。なれない人が組織に入る。そういう感覚を家庭ではぐくむ。それであれば最初から自分は自分と認識して生きていける。」


もし、「組織に入る、帰属するだけが生きる方法じゃない」ということが当然のこととしてアナウンスされていたら、もっと生きやすくなるはず。就職イコール就社ではないし、多様な生き方を認める社会のほうが楽しくて強靭なはずだ。

はしがきには、

たったひとりの人間が、これほど歴史に影響を与えたことは、これまでなかったかもしれない。おそらく、これからも。
マルクスはそれくらい、重要人物だ。
マルクスを理解すると、資本主義がわかる。
現代という、時代がみえてくる。

と、記されています。
今回の著作は、マルクスを勉強する一冊目となるであろう読者に向けて「公平に、バランスよく、マルクスについてのべるにはどうしたらよいか」(あとがき)に重点をおき構成されています。いったい「マルクス」とは何者だったのか、まずそこから知りたい人にとって絶好の書となっています。
現代という時代を刮目して見るためにも、ぜひご一読を!

《目次》
 1.なぜマルクスが登場したか
 2.資本主義とはどんなものか
 3.マルクス主義の誕生
 4.マルクス主義の発展
 5.日本のマルクス主義
 6.ポスト冷戦の世界

『労働者の味方マルクス―歴史に最も影響を与えた男マルクス
 橋爪 大三郎/著 
 現代書館>> 
 2010年11月30日 出版
 価格:¥ 1,260(税込み)

2011年2月18日 光文社古典新訳文庫編集部 |

『経済学・哲学草稿』の読書会が国立市公民館で行われました

1月8日(土)から国立市公民館で行われた "哲学講座「長谷川宏さんと読む一冊の本」"(全5回/毎土曜日)の企画を担当された和田正子さんからレポートをいただきました。

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国立市公民館では、この7年間、長谷川宏さんを講師に一冊の本を読むという読書会を行っています。インターネットが発達したこの時代に読書会、それも哲学の本をテキストにした会が成り立つかというと、これが好評で、募集定員をはるかに超えるほどです。心苦しくもお断りをしなければならないほど、申込みがあります。

今年度は、マルクスの『経済学・哲学草稿』(長谷川宏訳、光文社古典新訳文庫)をテキストに39名の参加者で読書会をしました。前半は講義、後半は参加者からの質疑、意見交換でしたが、思いがけない質問や核心をついたものなど、さまざまな方が参加している良さがあり、長谷川さんの講義と相まって深みのある講座となりました。

社会主義国の崩壊であまり読まれなくなったマルクスの本が、新しい長谷川さんの訳で生まれ変わりました。マルクス再評価の機運もあって、かつて読んだ50代以上の方や、これからマルクスを読みたいという20代の方が大勢集まったこの講座への参加の動機を聞きました。簡単ですが少し紹介させていただきます。

● 今の時代だからこそマルクスかなと思って、読みたかったので参加した。
● 一人では読む自信がなかったが、読書会があるというので申し込んだ。
● マルクスの解説書は読んだことがありますが、著作を読んだことはなかったので来ました。
● マルクスの著作は初めて読むので楽しみにしています。
● 1945年生まれです。興味はずっとありましたが、読む機会がなかったので参加しました。
● 大学のころに読まされた記憶があるが、そのときに理解していたかどうかと思うので、再度挑戦したい。
● 左翼ではなく、マルクスのヒューマンな面を知りたい。
● 最近、光文社の新しい訳でこの本が出たので、マルクスを読んでみようかと参加しました。
● この本を買いましたが、まだ読んでいませんでした。公民館だよりを見ていたら、この講座があるのを知って来ました。
● 安保から50年経って、長谷川先生のお話を聞きながら読み直すいいチャンスだと思いまして、参加しました。
● これから『経済学・哲学草稿』を読んでいこうと思っていたら、この講座があると知り参加しました。
● 一人では読めないので、こうした会に出てみました。
● 60年くらい前に読みましたが、また勉強をしたいと思い参加しました。。
● 長谷川先生のお話が聞けるので、楽しみにしていました。
● この本は、ずっと気になっていた本なので、参加しました。
● 卒論でこの本をとりあげました。長谷川先生のお話を楽しみにしています。
● 35年前に仲間と読んだんですが、そのときはすごく難しかったので、今回、参加してみました。
● 大学時代に読まされたと記憶しているが、10数年ぶりに読むのも新鮮だと思って参加した。
● 私の学生時代は"実存主義"の時代、哲学の時代でしたが、この新訳が出て懐かしく思って参加しました。
● 「疎外された労働」が卒論のテーマでした。それ以来、女性の労働というものを自分自身のテーマとしてずっと考えてきたので、これを機会にと思って参加しました。
● 今、大学生ですが、これからマルクスを読む良い機会だと思って参加しました。

 
それぞれの人生の中で、かつてこの本に出会った人、初めて読む人、この機会に再度読もうとする人が入り混じっての読書会でした。

長谷川宏さんの青年マルクスの思想への深い読みがあり、参加者のさまざまな感想・意見が活発にあって、2時間があっという間の連続5回の講座でした。


国立市公民館 和田正子
 

■ 続けて来週は、参加された方のレポートをお届けします!

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2011年2月16日 光文社古典新訳文庫編集部 |