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『ケンジントン公園のピーター・パン』(バリー/南條竹則 訳)

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ケンジントン公園のピーター・パン

ケンジントン公園のピーター・パン

  • バリー/南條竹則 訳
  • 定価(本体680円+税)
  • ISBN:75353-5
  • 発売日:2017.5.11

ちょっぴり不気味でユーモラスなファンタジー
思ってたのと違う!
でも意外と味わい深いいちばん最初のピーター・パン

作品

ここに描かれているのは、子どもと一緒に空を飛ぶ勇敢なピーター・パンではなく、半分人間で半分鳥の赤ん坊のピーターです。神話の世界と幻想の世界が織り交ざった、"可愛らしいお化け"ピーターの魅力がいっぱいの、もうひとつの「ピーター・パン物語」。


物語

かつて鳥だったころのことが忘れられず、母親と別れてケンジントン公園に住むことになった赤ん坊のピーター。葦笛で音楽を奏でたり、小さい家での一夜の出来事など、妖精たちや少女メイミーとの出会いと悲しい別れを描いたファンタジーの傑作。挿し絵はアーサー・ラッカム。


解説

南條竹則


J・M・バリー James Matthew Barrie
[1860-1937] スコットランドの作家・劇作家。大学を卒業後、ロンドンに引っ越し たのち、小説と劇作に意欲的に取り組む。最初に書いたピーター・パン物語は小説『白 い小鳥』(1902年)に挿入された話中話で、本書は1906年刊行。劇『ピーター・パン、 あるいは大人になろうとしない少年』(04年)が大成功を収め、これを小説家したのが『ピーターとウェンディー』(1911年)。その後も人気劇作家として数々の戯曲を発表する。「ピーター・パン」から得られる全収入を寄付するなど慈善事業を行ったが、家庭での生活には恵まれなかった。1937年死去。
[訳者]南條竹則
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。主な著書に小説『あくび猫』、エッセイ『恐怖の黄金時代──英国怪奇小説の巨匠たち』『ドリトル先生の英国』、『吾輩は猫画家である』、主な訳書に『ねじの回転』(ジェイムズ、共訳)、『D.G.ロセッティ作品集』(共訳)、『アーネスト・ダウスン作品集』、『新アラビア夜話』(スティーヴンスン、共訳)、『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン)、『白魔』(マッケン)、『天来の美酒/消えちゃった』(コッパード)、『秘書綺譚』(ブラックウッド)、『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』(オブライエン)、『カンタヴィルの幽霊/スフィンクス』(ワイルド)、『エリア随筆』(ラム)など。
《関連刊行本》
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2017年5月11日 光文社古典新訳文庫編集部 |

『カンタヴィルの幽霊/スフィンクス』(ワイルド/南條竹則 訳)

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カンタヴィルの幽霊/スフィンクス

カンタヴィルの幽霊/スフィンクス

  • ワイルド/南條竹則 訳
  • 定価(本体980円+税)
  • ISBN:75321-4
  • 発売日:2015.11.11
  • 電子書籍あり

親友の女性作家(エイダ・レヴァーソン)とのウィットあふれるコラボレーション!
異色のオリジナル短篇集

作品

本書には短篇小説「秘密のないスフィンクス」と詩「スフィンクス」も収録し、さらに親友だったエイダ・レヴァーソンの作品を付録にした。種明かしをすると、これはいわば"スフィンクスづくし"の趣向で、ワイルドはレヴァーソンのことを、"スフィンクス"と呼んでいたのです。(訳者)


物語

結婚を控え、手相占いに翻弄される「アーサー・サヴィル卿の犯罪」。生真面目で頑張り屋の幽霊が棲みつくお屋敷をアメリカ公使一家が買って一騒動「カンタヴィルの幽霊」。長詩「スフィンクス」ほか短篇4作に、出獄したワイルドを迎えた親友の女性作家エイダの「回想」を含む佳作を収録。

オスカー・ワイルド
[1854−1900] アイルランド出身の作家・劇作家。外科医で著述業の父と、作家である母との間に次男として生まれる。自身の唱える芸術至上主義を身をもって実践し、ロンドン社交界で脚光を浴びる。29歳で結婚。『ドリアン・グレイの肖像』『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』などの話題作を発表し時代の寵児となるが、同性愛の罪で逮捕・投獄される。出獄後フランスに渡るも、3年後の1900年、パリにて客死。
[訳者]南條竹則
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。主な著書に小説『あくび猫』、エッセイ『恐怖の黄金時代──英国怪奇小説の巨匠たち』『ドリトル先生の英国』、『吾輩は猫画家である』、主な訳書に『ねじの回転』(ジェイムズ、共訳)、『D.G.ロセッティ作品集』(共訳)、『アーネスト・ダウスン作品集』、『新アラビア夜話』(スティーヴンスン、共訳)、『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン)、『白魔』(マッケン)、『天来の美酒/消えちゃった』(コッパード)、『秘書綺譚』(ブラックウッド)、『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』(オブライエン)、『エリア随筆』(ラム)など。
《関連刊行本》
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2015年11月11日 光文社古典新訳文庫編集部 |

〈あとがきのあとがき〉「ロマン派+SF的」というオブライエンの特異性 『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』の 訳者・南條竹則さんに聞く

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お待たせしました、南條竹則さんの翻訳の新作です。

今回の作家は、フィッツ=ジェイムズ・オブライエン、19世紀中期のアイルランド生まれのアメリカの小説家。

24歳でロンドンからニューヨークに渡り、新聞・雑誌に小説や評論を発表。そして南北戦争勃発を機に北軍に入隊。その戦争で受けた傷がもとで34歳の若さで亡くなりました。

そのオブライエンが遺した独特な作品群の中から、南條さんが選んだ、幻想、神秘、奇想に富む8作を収録した短編集が、この『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』です。

オブライエンがどんな作家なのか、このインタビューの南條さんの言葉から想像してみて下さい。......ドイツ・フランスのロマン派の味わいに、SF的な要素という組み合わせ......この取り合わせ、不思議です。いったいどんな作家なのでしょう。

さあ、オブライエンという独創的な才能を発揮した作家を南條竹則さんに語っていただきましょう。

ロマンティックなのに、理知的で、さらに......
Fitz James O'Brien 001
Fitz-James O'Brien

------このフィッツ=ジェイムズ・オブライエンという作家は、一般的には知られていない作家だと思います。日本の幻想文学ファンは、どんな認識なのですか?

南條 大瀧啓裕さんが訳して『失われた部屋』(サンリオSF文庫)と『金剛石のレンズ』(創元推理文庫)の2冊を出していますから、それを読んでいる人でファンになった人もいたでしょう。しかし作品も少ないしマイナー作家だと思われているようです。

欧米でも本格的な伝記は一冊しか出版されていません。フランシス・ウォールによる『フィッツ=ジェイムズ・オブライエン』ですが、それが出たのが1944年、もう60年もたっているのにそれだけですから、やはり向こうでもマイナー作家という認識なのでしょう。また、評価の定まった作家であれば、定本作品集が大学出版局などから出るものですが、オブライエンの場合は、好事家が作品集を出しているという段階です。まだそのような扱いの作家なのです。

------実際に読んでみると、もっと知られていい作家だと思いました。

南條 ロマンティックな文章を書く人です。基本はロマン派の作家ですね。アイルランド生まれのアメリカの作家ですが、ホフマンやテオフィール・ゴーチェのようなドイツ・フランスのロマン派の味わいがある。色彩感が豊かで夢があって......しかし、そこにエドガー・アラン・ポーのような理知的な志向、SF小説の元祖といわれるような科学的要素が組み合わさっている。この取り合わせは、他にはありません!

------今、この短編集を出した理由は?

南條 オブライエンを私は非常に気に入っていましたから、古典新訳文庫の仕事を引き受けた時点から、短編集を出したいとは考えていました。ただし大瀧さんの翻訳もあったし、私が訳す必要は当分ないと思ってたのです。しかし、たまたま必要があって、大瀧訳の『金剛石のレンズ』を探すと品切れになっていたことに気づいた。『失われた部屋』はもうすでにないサンリオSF文庫ですから、読者はオブライエンを読もうと思っても入手困難......それだったら、訳そうということで、考えたのがこの短編集なのです。

------作品選択の基準を教えていただけますか。

南條 先に話しましたが、オブライエンはSF小説の先駆者といわれていました。科学的な発想で奇想天外な物語を作るという傾向がありましたから。しかし、ここでは、そのイメージから離れたゴーストストーリー的なものを多く選んでいます。ファンタジスト、怪奇小説作家としての側面に焦点を絞って編纂したつもりです。

ロボット物、貧民街物、中華物......

------いくつかの作品についてのコメントをお願いします。表題作の一つ「ダイヤモンドのレンズ」は、ダイヤモンドを使った顕微鏡を完成させた研究者が、覗いてみた水滴の中に完璧な美をもつ女性を見いだすという物語です。

南條 これは極微世界の描写が素晴らしい。顕微鏡を覗く前の部分までは、まあ、エンターテイメント系の作家なら誰もが書けそうですが、覗いた後の描写が格別です。この作家でしか描けないよいうな色彩豊かな世界、そこに美女が待っています。

------これは他の作品にも共通していることですが、幻想場面の描写がこけおどしではなく、しっかり丁寧に書き込まれているんですね。この描写力の素晴らしさと、それから、現代の小説では味わえない、昔の文章の質感を強く感じました。

南條 台詞まわしとか、非常に大時代ですよね。私はこういうの嫌いじゃないんですよ。

短編集の最後に入れた「ハンフリー卿の晩餐」は、O・ヘンリーを思わせる貧困に陥った夫婦の人情劇ですが、そこで語られる夫と妻の会話も芝居がかっています。しかも19世紀の芝居みたいにレトリックをたくさん使った長ゼリフが出てくる......このあたりの大時代な味わい、私はこの人のそういうところが好きで、楽しく訳せました。

Attributed to Silas A. Holmes (American - Broadway Looking North from Between Grand and Broome Streets - Google Art Project
19世紀半ばのブロードウェイ
Broadway Looking North from Between Grand and B... (about 1853 - 1855)

------もうひとつの表題作「不思議屋」は、19世紀、ニューヨークの貧民街を舞台にしています。そこに店を出す謎の商人が、人形の群れを遣って殺人を行おうとする物語です。

南條 「ロボット物」の古典といわれている小説ですね。勿論ロボットという言葉はまだ使っていません。自動人形がテーマになっていると点で、後のロボット小説とつながりがあります。

------そういったSF的なところも面白いのですが、この小説で非常に魅力的だったのは、貧民街の描写です。

南條 このあたりは今、非常に難しい問題に触れてしまいますね。最初、私は日本語の言葉の規制をいっさい気にせず原作のニュアンスに忠実に訳します。しかし最終校正の時は、やはり「これはだめだ」と手直しを求められる。

------それが今の日本の言葉の現実なんでしょうね。しかし「不思議屋」を読んでいくと、貧民街が物語を発生させる優れた装置であることがわかり、「ロボット物」があるように「貧民街物」という物語のジャンルがあったことを思い出しました。

南條 そういうアンソロジーがあるとするなら、貧乏文士を描いたジョージ・ギッシングの『三文文士』が入るだろうし、ロンドンの貧民街イーストエンド出身の作家、アーサー・モリスンの『チャイルド・オブ・ジェイゴ』もいいですね。これはジェイゴと呼ばれる貧しい街の物語です。ヒューバート・クラッカンソープの『残り火』なんかもいい。

私が編むとしたら、漫画家の川崎ゆきおの『路地裏の散歩者』を入れるかな(笑)。大都市の片隅を独自の視点で描くこの漫画家の大ファンなんですよ。

------川崎ゆきおの名前が出てくるとは! 確かに日本の「貧民街物」を考えた場合、「ガロ」系の漫画を無視することができませんね。貧乏と幻想が結びつく多くの作品がありますから。

さて、オブライエンのこの短編集を読んでいくと、この貧民街もそうですが、19世紀中期のニューヨークの街角の光景や風俗が時々現れてきます。これは私たちがまったく知らなかったニューヨークだったので、とても新鮮でした。

南條 そうですね。オブライエンが書いた『トマトゥー』という小説があります(本書未収録)。これはトマトゥーというニックネームをもつ少女の物語です。物語の筋は大したことがないのですが、ニューヨークのスターテン島を舞台にして、そこの情景をよく書き込んでいます。この都市の知らなかった様子を見ることができます。

------この短編集には、『手品師ピョウ・ルーが持っているドラゴンの牙』という作品も入っています。中国を舞台にしたマジカルストーリーなんですが......これは欧米のファンタジーなどで時に見られる「中華物」というジャンルの作品ですね。

南條 このジャンルで有名な人に19世紀末に活躍したサックス・ローマーという作家がいます。ロンドンのチャイナタウンを舞台にした一連の小説を発表しています。怪人フー・マンチュー博士の生みの親ですね。

------フー・マンチューで、「中華物」の魅力がなんとなくわかってきました。白人俳優が中国人を演じる時に生ずる独特なエキゾチズムというのでしょうか、それが小説として展開するのが「中華物」ですね。

南條 解説に書いたのですが、「おおむねほんの少しの中国的な要素に、西洋人の抱く東洋幻想がたっぷりと混ぜられたカクテル」ということです。しかし、この小説では「ほんの少しの中国的な要素」が現実の中国、当時の清と関係をもっているところが面白いのです。

たとえば登場人物の大臣の名前が、1850年に起きた太平天国の乱の指導者の一人の名前に似ています。

その他、作中の固有名詞には漢字に復元できるものもあり、作者は、チャイナタウンあたりの中国人に協力してもらったのではないかと想像してしまいます。

私もこの小説に登場している名前を調べるのに、近所の広東人や福建人の知り合いに聞いたりしましたけど(笑)。ただ客家(ハッカ)語の発音は調べませんでした。

2014年は、『エリア随筆』の年でした

------さて、南條さんにはブラックウッドの『人間和声』以来、久しぶりに「あとがきのあとがき」に登場していただきました。ということで、近況を教えていただけますか。

『完訳・エリア随筆 Ⅰ』
チャールズ・ラム 著
南條竹則 訳/藤巻明 註釈
国書刊行会

南條 今年はなんといってもチャールズ・ラムの『完訳エリア随筆Ⅰ正篇[上]』を5月に、『完訳エリア随筆Ⅱ正篇[下]』を8月に、国書刊行会から出したことがトピックです。

------チャールズ・ラムというのは、19世紀前半に作品を発表していたイギリスの作家、名文家として知られていて、その代表作が『エリア随筆』となる......ということですが。

この「訳者あとがき」を読むと、国書刊行会の編集者に翻訳を勧められても、ずっと断っていたと書いています。その理由として「エリア氏(ラムのこと 引用者註)の長文癖と典故のおびただしさを考えると、とても手を出す気にはなれない」と記していますが。

南條 しかし、結局は翻訳をすることになってしまった(笑)。引き受けた理由のひとつが、知り合いの藤巻明さん(立教大学教授)が注釈をつけてくれることになったからです。

------この本は注釈の数とボリュームがすごいですね。『エリア随筆』での注釈の意義を教えて下さい。

南條 本文を読んだだけでは100%わからないところがあるんです。ラムは博識な人で古典の引用が多いのですが、それだけでなく、友人や身内が文章に出てきて、楽屋落ちみたいな冗談も書く、これは事情を知らなければ完全には楽しめません。

しかし注釈を付けるといっても、19世紀前半のことをよく知らない私などが書いても隔靴掻痒になってしまいます。その点、藤巻さんは19世紀前半の文学を専門としてしている。しかもラムの生涯の親友である詩人サミュエル・テイラー・コールリッジの研究家です。彼がこの仕事をしてくれるということで、私も『エリア随筆』の翻訳をする決心がついたのです。そしてやっと今年、正篇が完成することができました。

来年以降は、『エリア随筆続篇』をやはり上下巻で出すことが決まっています。

------大仕事ですね。今回は忙しいところ、ありがとうございました。

(聞き手 渡邉裕之)
不思議屋/ダイヤモンドのレンズ

不思議屋/ダイヤモンドのレンズ

  • オブライエン/南條竹則 訳
  • 定価(本体1,000円+税)
  • ISBN:75301-6
  • 発売日:2014.11.12
 

2014年11月25日 光文社古典新訳文庫編集部 |

『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』(オブライエン/南條竹則 訳)

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不思議屋/ダイヤモンドのレンズ

不思議屋/ダイヤモンドのレンズ

  • オブライエン/南條竹則 訳
  • 定価(本体1,000円+税)
  • ISBN:75301-6
  • 発売日:2014.11.12
  • 電子書籍あり

豊﨑由美さん推薦!
「幼心を顕微鏡でのぞいてみれば、いともたやすく驚異の世界に入っていける。
そのことを思い出すために、F‐J・オブライエンの小説がある。」

作品

完全な顕微鏡を完成させた素人学者が、覗いてみた水滴の中に完璧な美をもつ女性を見出す「ダイヤモンドのレンズ」。ロボット物の古典として評価の高い「不思議屋」。独創的な才能を発揮しポーの後継者と呼ばれるオブライエンの幻想、神秘、奇想に富む8作を収録した傑作短篇集。


内容

「妖美という言葉が真に当てはまる小説をいくつか挙げてみろと言われたら、わたしは躊躇いなく『ダイヤモンドのレンズ』をその一つに数えるでしょう」(訳者)。怪奇幻想小説の新訳で大注目の南條竹則氏。その南條氏が、自身の思い出とシンクロする表題作を含め、愛着ある作品ばかりで編んだ珠玉の八篇をお贈りします。


収録作品
  • ダイヤモンドのレンズ
  • チューリップの鉢
  • あれは何だったのか?──1つの謎──
  • なくした部屋
  • 墓を愛した少年
  • 不思議屋
  • 手品師ピョウ・ルーが持っているドラゴンの牙
  • ハンフリー公の晩餐

〈あとがきのあとがき〉「ロマン派+SF的」というオブライエンの特異性 『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』の 訳者・南條竹則さんに聞く
音楽をこよなく愛する者が、音楽とカバラをテーマにした驚異の小説を訳す ──『人間和声』の訳者・南條竹則さんに聞く
『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』「温泉郷でブラックウッドを翻訳す」 南條竹則さんに聞く
"最速重版"の記録をもつブラックウッド短篇集『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』刊行時(2012年1月)のインタビュー
フィッツ=ジェイムズ・オブライエン
[1828-1862] アイルランド生まれのアメリカの小説家。ダブリン大学で教育を受けた後、ロンドンに出るが、遊蕩三昧の生活で遺産を使い果たしてしまい、24歳でニューヨークに渡る。新聞・雑誌に小説や評論を寄稿しながら贅沢な生活を送っていたが、貧困に陥り、南北戦争勃発を機に北軍に入隊。ようやく赴いた前線で敵方の将校との決闘になり、その時に受けた傷がもとで34歳の若さで亡くなった。
[訳者]南條竹則
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。著書に小説『満漢全席』『あくび猫』『りえちゃんとマーおじさん』、エッセイ『恐怖の黄金時代──英国怪奇小説の巨匠たち』『ドリトル先生の英国』、主な訳書にアンソロジー『怪談の悦び』、『ねじの回転』(ジェイムズ、共訳)、『アーネスト・ダウスン作品集』、『新アラビア夜話』(スティーヴンスン、共訳)、『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン)、『白魔』(マッケン)、『天来の美酒/消えちゃった』(コッパード)、『秘書綺譚』(ブラックウッド)など。
《関連刊行本》
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2014年11月12日 光文社古典新訳文庫編集部 |

〈あとがきのあとがき〉音楽をこよなく愛する者が、音楽とカバラをテーマにした驚異の小説を訳す ──『人間和声』の訳者・南條竹則さんに聞く

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怪奇小説の巨匠アルジャーノン・ブラックウッド。彼のファンに強く翻訳を望まれつつも、長い間未訳の状態が続いていた噂の長篇小説『人間和声』が、遂にこの春に発刊されました。

主人公の青年ロバート・スピンロビンは、ある日、一風変わった求人広告を見つけます。フィリップ・スケールという引退した牧師が秘書を求めているのですが、採用の条件は「テノールの声とヘブライ語に関するいささかの知識」という奇妙なものでした。

スケール師に会ってみると、彼は「音」に関する研究をしており、そのためにある音域と特性の声を持つ人間が必要なのだといいます。

実はスケール師、言葉の持つ神秘の力を研究しているのでした。それは、天使の名を発音すれば、天使を呼び出すことができるというもの。さらに、彼は造物主の名を唱えようと計画していました。そのためには、単独の声ではなく和声で、その名を唱える必要があるのです。バス、テノール、アルト、ソプラノ......スピンロビンはテノールのパートを受け持つために招かれたのでした......。

抜群のアイデアの物語です。訳したのは怪奇小説ファンにはおなじみの南條竹則さん。お話を伺ってきました。南條さんの深い深い音楽愛、それがきっかけで翻訳の世界に入ったことなど、非常に興味深い話を聞かせていただきました。

------『人間和声』を初めて読んだ時の印象を教えて下さい。

南條 22歳くらいの頃に読みましたが、強烈な印象を得ました。主人公のロバート・スピンロビンが、フィリップ・スケール師の屋敷に行きます。そこがお化け屋敷のような状態となり、スケール師が小さくなって主人公の部屋に来るシーンがあるでしょう。あの場面が怖くて気持ち悪くて......。

そして、いよいよ問題の発声が始まる。その最終パートの畳みかけるような展開はすごいと思いました。

------音と光の大嵐が巻き起こるなど、大スペクタクルシーン続出のクライマックスです。

南條 ただし、こけ威しのクライマックスではありません。ブラックウッドのように、本当に心の目でこうした超常現象を見てきた人でなければ、書けないものになっている。そして一番最後に、カタストロフィーが収まり、きれいな音色が流れてきます。ああいった美しいシーンは、普通の作家では書けないでしょう。

------クライマックスの展開に、深い意味をもたせていますね。

南條 読者に感動をただ提供しているのではなく、メッセージを送っている。このあたりのことを考えると、私はSF作家のH・G・ウェルズとの共通性を感じます。二人とも芸術性よりもメッセージを大切だと思っている。だから『人間和声』を19世紀のウェルズ以来のSF小説として読むことも可能です。

------今回「解説」で南條さんは、ブラックウッドの12篇の長篇小説をそれぞれ紹介しています。

南條 それも読者にメッセージを伝えようとした作家であることと関係しています。「解説」にも書きましたが、本来怪奇小説は短篇という形式に適したものです。しかし、ブラックウッドは「幻視の人」。現実世界の向こう側にある神秘的な領域を見、それを読者に伝えようとした。この壮大な幻想を表現するには、長篇という大きな器が必要なんですね。

------12の長篇の中には、違ったものもありますが、オカルティストとして真剣にメッセージしている作品が多くありますね。また、ブラックウッドの全長篇を知ることができる、この「解説」はありがたいです。

南條 さすがに12の長篇を読むのには、ほとほと疲れました(笑)。翻訳するより大変な作業でした。

音楽愛、そして中学3年生が声楽曲の訳詞を発表

------この作品のポイントは、名前や文字が霊力をもつという神秘主義の概念に、音楽の和音という要素を導入したところです。そしてブラックウッドもかなりの音楽通らしい。そこでお聞きしたいのですが、南條さんはどんな音楽がお好きですか?

南條 私は交響曲が好きで、シベリウスなどをよく聴きます。若い頃は、渡邉暁雄や山田一雄が指揮する東京都交響楽団を聴きに、上野の文化会館によく行きました。

60年代の頃の話ですが、当時私はイギリスのジョン・バルビローリという指揮者が好きでした。そのバルビローリが1970年の大阪万博に来るというのです。少年の私はとても期待していたのですが、その一ヶ月前に心臓発作で彼は亡くなってしまったのです。実に残念でね......。私は『魔法探偵』(集英社)という小説を書いています。それは、魔法を使って主人公が失せ物を捜しに70年の万博に出かけていくという話なんですけど、そこに万博会場で指揮するバルビローリを登場させています。

------噂で聞いたのですが、翻訳の仕事を始めたきっかけは音楽関係からだとか?

南條 ああ、中学生の頃の話です。私は、フレデリック・ディーリアスというイギリスの作曲家が好きだったのです。彼の声楽曲が日本では出ていないので、輸入版を買ってその詞を読んでいたんです。今ならただ読むだけですが、中学生だから辞書を引いて対訳をノートに書いていました。

当時、三浦淳史先生という音楽評論家の方が、ディーリアスについて「ステレオ芸術」や「レコード芸術」といった雑誌に書いていました。私はディーリアス・ファンとして手紙を出し、三浦先生と知り合うことになったのです。それがきっかけで、ノートに書いていた訳詞を、東芝EMIがレコードを出す時に使うことになったのです。

これが私の活字になった初めての翻訳の仕事です。中学3年生の時でした。

この声楽曲は『海流』という作品で、アメリカの詩人ホイットマンの『草の葉』の詩を唄ったもの。私はアメリカ文学なんて、あまり好きではありませんが、そんなこともあって、ホイットマンだけは気に入っているんですよ。

------出版の世界での翻訳デビューは、いつなんでしょうか?

南條 大学生の時ですね。早稲田の幻想文学会が「金羊毛」という同人誌をやっていました。70年代中期の話ですが、神田の三省堂の近くに三省堂アネックスという書店があって、そこは幻想文学系の本を平積みにするようなところだったのです。その書店で学生の私は「金羊毛」を見つけ、手紙を出し幻想文学会に入れてもらったのです。

当時私は、『幽霊船』という作品を書いたリチャード・ミドルトンという作家が好きで、自分でいくつか訳していました。その翻訳を4本、それに解説を付けて「金羊毛」2号に出したのが最初ですね。

仕事としては、国書刊行会から矢野浩三郎監修の『ラブクラフト全集』が出た時に、翻訳者の一人として参加したのが、たぶん最初です。

一人で翻訳をした単行本は、アーサー・マッケンの『輝く金字塔』(国書刊行会)が最初です。

『怪奇三昧』と『中華料理秘話 泥鰌地獄と龍虎鳳』

------さて、南條さんはこの春に『怪奇三昧--英国恐怖小説の世界--』 という本を出しました。

南條 はい、イギリスの怪奇小説の巨匠たちを、それぞれの人生のエピソードを織り込みながら紹介するというものです。これは前に集英社新書で出したのですが、新たな要素を加えて小学館から出し直しました。

第一章はブラックウッド。その他は、アーサー・マッケン、ダンセイニとラブクラフト、M・R・ジェイムス、それにH・R・ウェイクフィールドやメイシンクレア、リチャード・ミドルトンなどをとりあげています。それに付録として、紹介した作家の翻訳を載せたものです。

------それぞれの作家の人生がなかなか面白い。

南條 面白いでしょう! 限られた紙数で人生全体を語るのは難しいので、自分が印象に残ったある一面だけをクローズアップする手法をとりました。

------作家の特徴を捉えた人生の一場面になっているんですね。ブラックウッドの場合は、若い頃に病気になった時のエピソードです。

南條 彼は英国上流階級の家に生まれ、二十歳になると自活の道を探すためにカナダのトロントへ渡ります。それでいくつかの事業を立ち上げるんですが、ことごとく失敗してしまう。それで極貧の状態に陥ってしまうんですね。

そしてある時、病気になる。医者が来てくれるのですが、ブラックウッド青年は金がなくて治療代を払うことができない。ふと、その医者が、かたわらに置いてあった『バガヴァッド・ギーター』というインドの思想書に目をとめる。「この本は、あなたが読むのかね?」というんですね。それに答えて、ブラックウッドは自分の関心のありかを説明する。そんな青年に何かを感じたのか、それから医者は一銭の金も取らず、完全に治るまで治療をしてくれるんですね。

------ブラックウッドはインド思想に少年の頃から心ひかれ、その『バガヴァッド・ギーター』を「もっとも深遠な人類の聖典」と考えていました。その神秘的な聖典に命を救われるというのは、非常にブラックウッドらしいエピソードですね。こうした場面は、ある程度想像して書くものなんですか?

南條 いや、ブラックウッドは『三十路以前のエピソード』という青春の回想記を書いています。それをもとに書きました。この『怪奇三昧』に書いてあることは、作家の自伝や伝記などをもとにして綴ったものです。アーサー・マッケンの話もそうですが、ジョン・ゴーズワースが書いた伝記が当時は入手できず、後に発刊された別の人の伝記をもとにしています。

------そしてこの10月には、ちくま文庫から『中華料理秘話 泥鰌地獄と龍虎鳳』 が出ましたね。中華料理に関する書き下ろしエッセイ集です。どんなことが書いてあるんですか?

 

南條 まあ、いろいろと書きましたが、たとえば2010年に行った上海万博のことです。やはり中国ですから、万博会場でも食べるところは充実していました。四川料理、広東料理など中国の八大料理がずらりと揃っている、と思いきや何か足らない......北京の料理がないのです(笑)。北京料理なんか無視しているんですね。

------万博そのものはいかがでしたか?

南條 さっき話に出た70年の万博では、アメリカは月の石を持ってきたり、ソ連も力強いフォルムが印象的な建物を建てるなど、かなり力を入れていましたよね。この万博ではぜんぜん力をいれていない。アメリカ館もロシア館もかなり貧弱な印象でした。韓国館やサウジアラビア館が立派でしたね。まあ、それぞれの国家と中国との関係性が如実にわかる博覧会の会場でした。

面白かったのは、65歳以上の人専用の入り口があること。通常の入り口は長蛇の列ですから、お年寄りへ優遇の措置です。さすが年長の者に敬意を払う国ですね。

でもね、こんなことをしたら、絶対インチキをする奴が現れるなと思っていました。そしたら案の定、「年寄りを貸します」という商売が出現(笑)。入り口の前でおばあさんをレンタルする商売です。そうすると金を出した者は付き添いで入れるんですね(笑)。

------相変わらす、楽しい旅をしてらっしゃる(笑)。  今日はありがとうございました。今回のインタビューでは、南條さんが音楽をとても愛していることがわかってよかったです。そんな南條さんが、音楽とカバラを題材にした『人間和声』を翻訳してくれたことを、あの世でブラックウッドはとても歓んでいるのではないでしょうか。

(聞き手・渡邉裕之)

《南條竹則さん あとがきのあとがき》
"最速重版"の記録をもつブラックウッド短篇集『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』刊行時のインタビュー(2012年1月)
『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』「温泉郷でブラックウッドを翻訳す」 南條竹則さんに聞く
人間和声

人間和声

  • ブラックウッド/南條竹則 訳
  • 定価(本体933円+税)
  • ISBN:75270-5
  • 発売日:2013.5.14

2013年11月10日 光文社古典新訳文庫編集部 |

『人間和声』(ブラックウッド/南條竹則 訳)

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人間和声

人間和声

  • ブラックウッド/南條竹則 訳
  • 定価(本体933円+税)
  • ISBN:75270-5
  • 発売日:2013.5.14
  • 電子書籍あり

彼らがその歌で招いたものは......
ブラックウッド長篇のナンバーワン・ホラー、本邦初訳でついに登場!

作品

幻想怪奇小説の大家で、短篇作家として知られるブラックウッドの傑作長篇、ナンバーワンホラーです。〈勇気と想像力ある秘書求む。当方は隠退した聖職者。テノールの声とヘブライ語の多少の知識が必須とす。独身者〉。いかにも謎めいた求人に応募した主人公が訪ねたのは、人里離れた屋敷だった......。もうこれだけで何が始まるのか、期待が膨らみます。その屋敷には美しい娘がいて、ラブストーリーを織り交ぜながらスケールの大きい物語が展開されていきます。そして結末は......。


内容

短篇で知られるブラックウッドの長篇『人間和声』は、窮極のカバラ小説と言っても良いもので、荘厳な神秘主義とお化け屋敷を訪れるような怪奇趣味が適度に混ざり合い、面白く仕上がった傑作である。(訳者)


音楽をこよなく愛する者が、音楽とカバラをテーマにした驚異の小説を訳す ──『人間和声』の訳者・南條竹則さんに聞く
『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』「温泉郷でブラックウッドを翻訳す」 南條竹則さんに聞く
"最速重版"の記録をもつブラックウッド短篇集『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』刊行時(2012年1月)のインタビュー
アルジャーノン・ブラックウッド
[1869-1951] イギリスのケント州に生まれる。19歳でエディンバラ大学入学、農業を学ぶ。21歳でカナダに渡り、家庭教師、雑誌の編集助手などを経たのち、酪農業の会社をつくるが、翌年破綻。26歳で「ニューヨークタイムス」の記者、28歳で億万長者ジェイムズ・スペアーの個人秘書になる。1899年、30歳でイギリスに戻り、短編「幽霊島」を発表。31歳で宗教団体「黄金の暁」教団に入団。1908年、連作短編集『ジョン・サイレンス 異能の医師』で成功、専業作家となる。その後『ジンボー』『妖精郷の囚われ人』など、数多くの怪奇小説、ファンタジーなどを執筆。1951年、ロンドンで死去。享年82。
[訳者]南條竹則
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。著書に小説『満漢全席』『あくび猫』『りえちゃんとマーおじさん』、エッセイ『恐怖の黄金時代──英国怪奇小説の巨匠たち』『ドリトル先生の英国』、主な訳書にアンソロジー『怪談の悦び』、『ねじの回転』(ジェイムズ、共訳)、『アーネスト・ダウスン作品集』、『新アラビア夜話』(スティーヴンスン、共訳)、『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン)、『白魔』(マッケン)、『天来の美酒/消えちゃった』(コッパード)、『秘書綺譚』(ブラックウッド)など。
《関連刊行本》
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2013年5月14日 光文社古典新訳文庫編集部 |

『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』(ブラックウッド/南條竹則 訳)

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秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集

秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集

  • ブラックウッド/南條竹則 訳
  • 定価(本体933円+税)
  • ISBN:75232-3
  • 発売日:2012.1.12
  • 電子書籍あり

夜中の3時、正装した紳士が私の部屋に立っていた......。怪奇小説最大の巨匠「恐怖の王道」ここに降臨す。

作品

芥川龍之介、江戸川乱歩が絶賛した、イギリスを代表する怪奇小説作家の傑作短篇集。古典的幽霊譚「空家」「約束」、吸血鬼と千里眼がモチーフの「転移」、美しい妖精話「小鬼のコレクション」、詩的幻想の結晶「野火」ほか、名高いジム・ショートハウス物の全篇収める。


内容

「作品の読後感からいっても、ゾーッとするほど怖いものもあれば、薄気味悪いものもあり、怖くて綺麗でもあるもの、ほのぼのとしたもの、寂しいもの、悪どいもの、慕わしいもの、奇想天外なものとじつに千差万別で、たくさん書いたその中には無論凡作もありますが、傑作の数も多い----まことに万華鏡のような作家であります」(訳者)


「温泉郷でブラックウッドを翻訳す」 南條竹則さんに聞く

収録作品
  • 空家
  • 壁に耳あり
  • スミス----下宿屋の出来事
  • 約束
  • 秘書綺譚
  • 窃盗の意図をもって
  • 炎の舌
  • 小鬼のコレクション
  • 野火
  • スミスの滅亡
  • 転移

アルジャーノン・ブラックウッド
[1869-1951] イギリスのケント州に生まれる。19歳でエディンバラ大学入学、農業を学ぶ。21歳でカナダに渡り、家庭教師、雑誌の編集助手などを経たのち、酪農業の会社をつくるが、翌年破綻。26歳で「ニューヨークタイムス」の記者、28歳で億万長者ジェイムズ・スペアーの個人秘書になる。1899年、30歳でイギリスに戻り、短編「幽霊島」を発表。31歳で宗教団体「黄金の暁」教団に入団。1908年、連作短編集『ジョン・サイレンス 異能の医師』で成功、専業作家となる。その後『ジンボー』『妖精郷の囚われ人』など、数多くの怪奇小説、ファンタジーなどを執筆。1951年、ロンドンで死去。享年82。
[訳者]南條竹則
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。著書に小説『満漢全席』『あくび猫』『りえちゃんとマーおじさん』、エッセイ『恐怖の黄金時代──英国怪奇小説の巨匠たち』『ドリトル先生の英国』、主な訳書にアンソロジー『怪談の悦び』、『ねじの回転』(ジェイムズ、共訳)、『アーネスト・ダウスン作品集』、『新アラビア夜話』(スティーヴンスン、共訳)、『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン)、『白魔』(マッケン)、『天来の美酒/消えちゃった』(コッパード)など。
《関連刊行本》
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2013年1月28日 光文社古典新訳文庫編集部 |

『盗まれた細菌/初めての飛行機』(ウェルズ/南條竹則 訳)

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盗まれた細菌/初めての飛行機

盗まれた細菌/初めての飛行機

  • ウェルズ/南條竹則 訳
  • 定価(本体629円+税)
  • ISBN:75208-8
  • 発売日:2010.7.8
  • 電子書籍あり

笑い炸裂 スラップスティックからシニカルな笑いまで「SFの父」ウェルズのユーモア小説!11篇


物語

名作『タイムマシン』を生み出したSF作家でありながら、著者ウェルズは飛び抜けたユーモア感覚の持ち主でもあった。文明批判から、最新技術、世紀末のデカダンスまで、「笑い」で包み込む傑作短篇集!


内容

細菌学者の研究室からコレラ菌を盗み出した無政府主義者は、テロを企むが......(「盗まれた細菌」)。操縦経験がないのに、最新の飛行機で無謀にも空へ飛び立った青年が村に大騒動を巻き起こす(「初めての飛行機」)。
SFだけではない、ウェルズの新たな魅力を発見できる愉快な11篇!


収録作品  1894〜97、1903、1910 刊
  • 盗まれた細菌
  • 奇妙な蘭(らん)の花が咲く
  • ハリンゲイの誘惑 ※
  • ハマーポンド邸の夜盗 ※
  • 紫の茸(きのこ)
  • パイクラフトに関する真実
  • 劇評家悲話 ※
  • 失った遺産
  • 林檎(りんご) ※
  • 初めての飛行機 ー"アラウダ・マグナ"ー
  • 小さな母、メルダーベルクに登る ※
  • ※は本邦初訳

  • 〈付録 I〉
  • マックス・ビアボウム『クリスマスの花輪』より
     パーキンズと人類 第二十章 H・G・ウ*ルズ
  • 〈付録 II〉
  • マックス・ビアボウム画「H・G・ウェルズ氏」

ハーバート・ジョージ・ウェルズ
[1866−1946] イギリスの小説家。批評家。ケント州ブラムリーで、商人の子として生まれる。生地商や薬局に徒弟奉公に出されたが、1884年よりロンドンの科学師範学校で奨学生として学ぶ。ここで進化論者である生物学者ハックスリーから影響を受ける。その後、教職に就いたが肺病にかかり、療養中に短篇小説を雑誌に寄稿する。1893年ころから執筆に専念、『タイムマシン』『モロー博士の島』『透明人間』『宇宙戦争』など、自然科学の素養を元に、SF小説のヒット作を続々と生み出す。また、ジャーナリスト、批評家、社会主義者としても旺盛な執筆活動を展開した。
[訳者]南條竹則
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。著書に小説『満漢全席』『あくび猫』『りえちゃんとマーおじさん』、エッセイ『恐怖の黄金時代──英国怪奇小説の巨匠たち』『ドリトル先生の英国』、主な訳書にアンソロジー『怪談の悦び』、『ねじの回転』(ジェイムズ、共訳)、『アーネスト・ダウスン作品集』、『新アラビア夜話』(スティーヴンスン、共訳)、『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン)、『白魔』(マッケン)、『天来の美酒/消えちゃった』(コッパード)など。
《関連刊行本》
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2013年1月28日 光文社古典新訳文庫編集部 |

『天来の美酒/消えちゃった』(コッパード/南條竹則 訳)

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天来の美酒/消えちゃった

天来の美酒/消えちゃった

  • コッパード/南條竹則 訳
  • 定価(本体648円+税)
  • ISBN:75197-5
  • 発売日:2009.12.8

荒俣宏氏推薦!「短編の神コッパードが描く、英国の奇想、恐怖、不思議」

作品

小説の"型"にはまらない意外な展開と独創性。幻想怪奇小説やファンタジーの枠に収まらない破天荒な物語を、無常感とユーモア漂う文体で紡いだ短編小説の精華。南條竹則・幻想シリーズ第4弾!


内容

故郷の酒蔵で見つけた一本の麦酒で人生が急変する男を描く「天来の美酒」。車で旅する夫婦と友人が大きな街で一人、また一人と消えていく「消えちゃった」。生涯、短篇小説を中心に執筆し続けた「短篇の職人」コッパードが練達の筆致で描いた珠玉の11篇。


収録作品
  • 消えちゃった
  • 天来の美酒 *
  • ロッキーと差配人(さはいにん)
  • マーティンじいさん *
  • ダンキー・フィットロウ *
  • 暦博士 *
  • 去りし王国の姫君
  • ソロモンの受難 *
  • レイヴン牧師 *
  • おそろしい料理人 *
  • 天国の鐘を鳴らせ *
  • *は本邦初訳
アルフレッド・エドガー・コッパード
[1878−1957] 英国のケント州フォークストンの貧しい家に生まれ、5歳で港町ブライトンへ移り住む。9歳のとき父親が亡くなり、極貧生活のなか、10歳でロンドンの伯父の家に引き取られる。その後、再びブライトンに戻り、油の販売、石鹸製造業、運送会社、土木会社など様々な仕事につきながら本を読み漁る。29歳でオックスフォードへ移り、33歳から詩や小説を書きはじめる。1916年、短篇「Communion」が初めて雑誌に掲載され、以後、幻想的で詩情に溢れた短篇小説と詩を中心に執筆。晩年までその創作意欲は衰えなかった。
[訳者]南條竹則
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。著書に小説『満漢全席』『あくび猫』『りえちゃんとマーおじさん』、エッセイ『恐怖の黄金時代──英国怪奇小説の巨匠たち』『ドリトル先生の英国』、主な訳書にアンソロジー『怪談の悦び』、『ねじの回転』(ジェイムズ、共訳)、『アーネスト・ダウスン作品集』、『新アラビア夜話』(スティーヴンスン、共訳)、『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン)『白魔(びゃくま)』(マッケン)など。
《関連刊行本》
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2013年1月28日 光文社古典新訳文庫編集部 |

『白魔』(マッケン/南條竹則 訳)

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白魔

白魔 びゃくま

  • マッケン/南條竹則 訳
  • 定価(本体629円+税)
  • ISBN:75176-0
  • 発売日:2009.2.10
  • 電子書籍あり

「白い人が、微笑みながらやって来る......」妖魔(あやかし)の森がささやき、少女を魔へ誘う

作品

ウェールズの田舎の風光や民間伝承を背景とした、魔女小説の傑作「白魔」。故郷の森を思い出し、"実在"の世界に目覚めてゆく過程を描いた「生活のかけら」。幻想怪奇小説の大家マッケンが描く幻視の世界!


内容

緑色の手帳に残された少女の手記。彼女は迷い込んだ森のなかで「白い人」に魅せられ、導かれて......。(「白魔」)平凡な毎日を送るロンドンの銀行員にウェールズの田舎の記憶が甦り、やがて"本当の自分"に覚醒していく。(「生活のかけら」)魔の世界を幻視する、珠玉の幻想怪奇短編!

収録作品
  • 白魔
  • 生活のかけら
  • 『翡翠の飾り』より
  • 薔薇園 ※
  • 妖術 ※
  • 儀式 ※
  • ※は本邦初訳
アーサー・マッケン Arthur Machen
[1863−1947] イギリスの小説家。ウェールズの田舎の村で牧師の家に生まれる。医師の試験を受けるが失敗。18歳で文筆家を志しロンドンへ上京、家庭教師や出版社の仕事をしながら貧しい生活を送る。妻となるアメリア・ホッグと出会い、その紹介でオカルト研究家のA・E・ウェイトなどと知り合う。このころから代表作となる小説を執筆し始めるが、文壇からは酷評を受ける。1899年、アメリアが亡くなると絶望から黒魔術や劇団活動へ傾倒していく。1920年代にアメリカから再評価の気運が高まるが、1947年に亡くなるまでのほとんどの人生を不遇のうちに送った。主な作品に『パンの大神』『三人の詐欺師』『夢の丘』など。
[訳者]南條竹則
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。著書に小説『満漢全席』『あくび猫』『りえちゃんとマーおじさん』、エッセイ『恐怖の黄金時代──英国怪奇小説の巨匠たち』『ドリトル先生の英国』、主な訳書にアンソロジー『怪談の悦び』、『ねじの回転』(ジェイムズ、共訳)、『アーネスト・ダウスン作品集』、『新アラビア夜話』(スティーヴンスン、共訳)、『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン)など。
《関連刊行本》
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2013年1月28日 光文社古典新訳文庫編集部 |

『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン/南條竹則 訳)

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木曜日だった男

木曜日だった男 一つの悪夢

  • チェスタトン/南條竹則 訳
  • 定価(本体648円+税)
  • ISBN:75157-9
  • 発売日:2008.5.13
  • 電子書籍あり

探偵小説にして黙示録!ミスター木曜日とは誰? 刑事がテロリスト?幻想ピクニック譚、胸躍る新訳でついに登場!

作品

曜日の名を冠した男たちが美味しいものを食べて、美味しい酒を飲んで、追いかけっこをする......。「その物語は、筋書たるや奇想天外----探偵小説にして黙示録、副題のごとく一つの悪夢である」(訳者)


物語

この世の終わりが来たようなある奇妙な夕焼けの晩、十九世紀ロンドンの一画サフラン・パークに、一人の詩人が姿をあらわした。それは、幾重にも張りめぐらされた陰謀、壮大な冒険活劇の始まりだった。日曜日から土曜日まで、七曜を名乗る男たちが巣くう秘密結社とは。


ギルバート・キース・チェスタトン
[1874-1936] ロンドン生まれのジャーナリスト、詩人。名門パブリック・スクールを出たあと、一時、画家をこころざす。出版社に勤めながら、詩、書評などを書く。『新ナポレオン奇譚』『奇商クラブ』『木曜日だった男』などの作品刊行後、探偵小説として名高い「ブラウン神父シリーズ」(短編集全5作)を、25年にわたって世に問う。ほかに、評論『正統とは何か』『棒大なる針小』「ジョージ・バーナード・ショー」など多数。
[訳者]南條竹則
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。著書に小説『満韓全席』『あくび猫』『りえちゃんとマーおじさん』、エッセイ『恐怖の黄金時代----英国怪奇小説の巨匠たち』『ドリトル先生の英国』、主な訳書にアンソロジー『怪談の悦び』、『ねじの回転』(ジェイムズ、共訳)、『アーネスト・ダウスン作品集』、『新アラビア夜話』(スティーヴンスン、共訳)など。
《関連刊行本》
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2013年1月27日 光文社古典新訳文庫編集部 |

『新アラビア夜話』(スティーヴンスン/南條竹則・坂本あおい 訳)

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新アラビア夜話

新アラビア夜話

  • スティーヴンスン/南條竹則・坂本あおい 訳
  • 定価(本体571円+税)
  • ISBN:75139-5
  • 発売日:2007.9.6
  • 電子書籍あり

奇想・活劇・ダンディズム 『宝島』の著者が書いた19世紀ロンドン版「アラビアンナイト!」

作品

繁栄をきわめたヴィクトリア朝のロンドンは、いかなる冒険が待ち受けるかわからない魔法の都。本書は、各篇の主人公が謎と陰謀のさなかに引きずりこまれる、「狐につままれた人の乗合馬車」なのだ。


物語

理由なき自殺願望者が集うロンドンの夜。クリームタルトを持った若者に導かれ、「自殺jクラブ」に乗り込んだボヘミアの王子フロリゼルが見たのは、奇怪な死のゲームだった。美しい「ラージャのダイヤモンド」をめぐる冒険譚を含む、世にも不思議な七つの物語集。

収録作品
  • 自殺クラブ
  • クリームタルトを持った若者の話
  • 医者とサラトガトランクの話
  • 二輪馬車の冒険
  • ラージャのダイヤモンド
  • 丸箱の話
  • 若い聖職者の話
  • 緑の日除けがある家の話
  • フロリゼル王子と刑事の冒険
ロバート・ルイス・スティーヴンスン
[1850−1894] イギリスの詩人・小説家・随筆家。エディンバラに生まれ、病弱の身ながら、ヨーロッパ、アメリカ西部、南太平洋の島々を渡り歩き、サモア島で没。冒険小説『宝島』や、二重人格小説『ジキル博士とハイド氏』で大評判を博した。ほかにも歴史ロマン『バラントレイの若殿』や、詩集『子供の詩の園』など。
[訳者]南條竹則
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。著書に小説『満韓全席』『あくび猫』、エッセイ『恐怖の黄金時代----英国怪奇小説の巨匠たち』『ドリトル先生の英国』、主な訳書にアンソロジー『怪談の悦び』、『ねじの回転』(ジェイムズ、共訳)、『アーネスト・ダウスン作品集』など。
訳者]坂本あおい 
東京生まれ。青山学院大学文学部卒業。翻訳家。主な訳書に『アイス・ストーム』(ムーディ)、『ねじの回転』(ジェイムズ、共に共訳)、『熱い指、冷たい唇』(アーサー)など。
《関連刊行本》
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2013年1月27日 光文社古典新訳文庫編集部 |

〈あとがきのあとがき〉「温泉郷でブラックウッドを翻訳す」 南條竹則さんに聞く

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本書『秘書綺譚』の帯には「『恐怖の王道』ここに降臨す。」のコピーが。そして「怪奇小説最大の巨匠」の文字も見えます。

そう、怪奇幻想小説ファンには、「待ってました!」と思わず声をかけたくなる重鎮ブラックウッドの登場でした。

そして翻訳家の名前を見て、再度よろこんだ方も多いのでは。幻想小説の作家でもある南條竹則さんが、ブラックウッドの短篇から選んだ傑作集なのです。

今回の「あとがきのあとがき」に登場する南條竹則さんは、ご存知のように、文学だけでなく温泉や中華料理もこよなく愛する方。ブラックウッドの話の前に、まずは温泉郷の話が展開されます。

------「あとがき」で、本書の翻訳を山形県の赤倉温泉でおこなっていたと書いておられます。南條さんが温泉でどんな日々を過ごしているのか、とても興味があります。

赤倉温泉での私の一日を紹介しますと、たとえば朝起きて食事をし、二度寝してから岩風呂に入ります。そして仕事をするとすぐお昼に。旅館を出て「クラブ食堂」という店に行きます。ここにはアスパラ麺をつかったラーメンがある。この地域はアスパラガスの産地なんですね。うどん粉にアスパラを練り込んだ手打ちの麺がとてもおいしい。それから戻って仕事ですね。夕方になると晩飯を食べお風呂に入って読書をし、後は寝てしまうという生活です。
 私の場合、執筆はパソコンも多少使いますが、基本は手書き。翻訳は机に向かって書きますが、小説は寝て書く。風呂に入ると頭が覚醒するので、出たら湯冷めしないようにすぐ布団の中に入って書きます。
 使っている筆記具は、ぺんてるの硬質筆ペン。それを使ってプリントアウトした原稿に仰向けになって文字を書き込んでゆくんです。
 翻訳の場合は完全に手書き。こちらは仰向けにならず(笑)、座って筆ペンで原稿用紙にすらすらすらと書いていく。なぜ手書きかといえば、意識が途切れないから。パソコンは「変換」しますよね、そうすると「言葉の命」が切れてしまう。手で書くと長い文章に対応できるのです。

------ブラックウッドの言葉に対応することは大変なことですか?

この作家は、決して上手な書き手とはいえません。文章家として問題がある。たとえば形容詞を一つでいいのに二つも三つも並べるようなところがあります。日本語にしたら同じ言葉になってしまう形容詞が並んでいるので、訳している時、どうしてもつづめてしまうんですね。しかし、あまりに切ってしまうのも問題なので、校正の時に戻したりする。その作業がけっこう辛い。
 同じ怪奇幻想小説の作家、アーサー・マッケンなどはふつうに訳せば、それがそのまま読める日本語になるのだけれど、ブラックウッドは手強いですね。
 彼の文章の欠点は、しっかりとした文章修行をしていないことからきていると思います。イギリスの名家の御曹子だったブラックウッドは、子供の頃に文章の鍛錬をせず、アメリカでジャーナリストになりました。そこで身につけたのはジャーナリズムの文章だったんですね。だからどうしても文章が粗い。
 しかし、この作家がやっかいなのは、文章に問題があるのに内容が信じられないくらい面白いことですね。
 今回の本に入っている『転移』なんてすごいでしょ。地面と人間が対決するなんてことは、はっきりいってブラックウッドしか思いつかないですよ。

------あの作品には本当に驚きました。そしてやはりブラックウッドの魅力に取り憑かれてしまいました。そこでですが、南條さんは「解説」で「ブラックウッドにはまだ訳されていない重要な作品が多くある」という気になることを書いておられるのですが。

そうなんです、翻訳は決して少ない方ではないのですが、取りこぼされている重要な作品もあるんですね。たとえば『The Human Code』という小説。私は仮に「人間和声」と訳していますが、これはユダヤ教の神秘思想に出てくる「力の言葉」をテーマにしたものです。
 その言葉は、ユダヤ教の神であるヤーウェの御名です。それを発音すると驚異的な力が生み出されるといわれています。しかし、あまりに偉大な御名であるために一人では発音できない、集団でしなければいけないという設定になっている。
 そこでこの小説の魔法使いは、合唱のようにソプラノ、アルト、テノール、バスといった声域の違った人たちで、ヤーウェの御名を発声するというアイデアを考えたんですね。
『The Human Code』では、田舎に住んでいるカバラの研究者が、テノールの声をもつ秘書を新聞で募集するところから物語が始まります。
 主人公は募集に応じた青年で、彼はその研究者の屋敷に行くんですね。なんとそこにはソプラノの声をだす美女と、アルトのおばさんとバスの男が待っている(笑)。
 そして物語の最後では、テノールの主人公が入って完成したグループが、あの「力の言葉」を発声してみるという壮大な実験が行われるのです。

------(編集者Nが横から)面白そうですね〜! ぜひ、翻訳して下さい。

翻訳っていう仕事はけっこうたいへんなものなんですよ、だからすぐに「うん」とはいえません(笑)。先程、私は翻訳は手書きでといいましたね、しかし原稿用紙に書いたところで作業は終わったわけでありません。ゲラの校正がある。特に私の場合は、校正でものすごく文章を変えますからたいへんです。最初のゲラは真っ赤になる。誤字などを直すだけの校正になるのは第三稿くらいからでしょうか。その頃になると、最初の原稿とはかなり違ったものになっている。これが私の仕事のスタイルなのです。

イギリスの古書店で買った30冊のブラックウッド本を読む

------南條さんの翻訳スタイルが見えてきました。では、「解説」はどのように書いているのですか?

なるべく多くの資料にあたります。私は今から30年くらい前、大学院時代に、ブラックウッドの本を、オックスフォードにあるブラックウェル書店の古書部から30冊くらい一挙に買い込みました。それを出してきて、ひととおり読み、あの「解説」を書いたのです。

------その「解説」で、南條さんはブラックウッドの自然観について重要な指摘をしています。

大いなる自然と小さな人間との関係が、ブラウッドの全作品に通じるテーマだというところですね。自然と敵対する関係、それが物語になると恐怖小説になる。自然と一体となって恍惚境に達する関係。それは神秘小説を生み出します。そして彼の最良の作品は、この二つの領域の接点に位置するものなのだと書きました。
 ブラックウッドの『古き魔術』は人が猫になっていく物語ですが、あの作品は、接点に位置する小説の例ですね。

------それからブラックウッドと神智学との関係性についても書いています。その方面に興味をもった読者のために聞きたいのですが、神智学の影響が一番強く出ているのはどの小説になるでしょう?

『Julius Le Vallon』という作品があります。これは大昔、どこかの惑星にいた男女が間違いを犯して、それを償うために輪廻転生を繰り返す物語です。これなんか神智学の思想が全面的に展開される小説ですね。
 あとは『The Bright Messenger』。これは『Julius Le Vallon』の続篇で、問題の男女が生んだ子供が主人公の物語です。
 神智学の影響が際立って強いのはこの2冊かと思います。

今、温泉旅館で手掛けている翻訳と小説について

------では、今、南條さんが手掛けている仕事について、お聞ききします。まず翻訳の方ですが。

名文章家といわれているイギリスの作家、チャールズ・ラムの『エリア随筆』を訳しています。その紹介をする前に、今、翻訳や小説書きのために籠っている温泉についてお話しましょう(笑)。
 今日もそこから東京に出てきて、また数日後に戻るのですが、山形県の最上地方の最上町に瀬見温泉というところがあります。旅館の目の前には最上川の支流、小国川が流れているのですが、とてもきれいな川なんですよ。私が宿泊している旅館の本館の建物は150年くらい前に建てられたもので、じつに風情があります。
 この地域はうれしいことに「どぶろく特区」になっていて、どぶろくを自由につくることができます。それで番頭さんが一升瓶をもってきてくれたりします。
料理は川魚がとにかくうまい、アユ、イワナ、カジカ、ハヤ、それからナマズ。最近、友人が遊びにきたので、その夜はナマズ鍋を食べました。
 まあ、日常は相変わらずの、朝風呂、原稿、昼は近くの食堂というパターンですね。この温泉郷には寿司屋と食堂が一軒ずつあって、昼にその食堂に行かないと、そこのおばちゃんが病気でもしたかと心配する(笑)。
 まあ、5年間かかって訳した『エリア随筆』の最終作業を、そんな温泉地でしているわけです。しかし、この本はいいですよ。既に何冊か翻訳されたものがありますが、今はなかなか手に入りません。私は素晴らしい名文章を素晴らしく読めるようにしようと頑張っています。今年、国書刊行会から出る予定です。

------小説の方は?

『りえちゃんとマーおじさん』(ソニーマガジンズ)という子供向けの中華料理ファンタジーを、私は前に出しています。その続篇をまた仰向けになって書いています。自分でいうのもなんですが、大傑作です!
 前作にブタンバランという食い意地のはった妖怪が出てきて、退治されるのですが、その「ブタンバランの逆襲」といったストーリーですね。

------料理ファンタジーの話が出たところで、『中華満喫』(新潮選書)など中華料理の本も何冊も出している南條さんにお聞きしたいのですが、最近、中華で何かおいしいものを食べましたか?

最近ではないのですが、昨年の5月、中国の揚州にいっていろいろと食べてきました。 揚州料理というのは、一言でいえば、上海料理の甘くないもの、それは素晴らしい料理でした。
 そうそう、そこでとんでもない料理人に出会いました。一丁の豆腐を2万5千本に切るんです! 目の前でやってくれましたが、あまりに細く切っていくので、見ていてもよくわからない、できあがったところで水をかけると、豆腐が糸みたいにばらけていくんです。すごい技でした。
 それから杭州に行ったので、そこの料理人にそのことを話すと、「それはそう難しくない」というんですね。中国の料理人はスゴイ(笑)。

------(再び編集者Nが)......あの、やはり『The Human Code』、読みたいですね。ぜひ翻訳していただけないでしょうか......。

先程申し上げた『エリア随筆』が大変なんですよ。翻訳するとしたら、それを終えてからですね、この本には注釈を何千とつけなきゃいけない。深い教養をもったラムは、多くの書物からたくさんの引用をしながら文章を書いているので、どうしても注釈が多くなってしまう。それで、私はある案を考えまして......。

(と、ここから南條さんの非常に興味深い奇想天外な「ある案」の話が続くのですが、そこは非公開ということなので、このインタビュー原稿もここで終わらせていただきます。
 温泉話もそうでしたが、南條竹則さんの日常は非常にファンタジックな日々のようでした)

(聞き手/渡邉裕之・3月浅草にて)


cover142.jpg 秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集
ブラックウッド/南條竹則 訳
定価(本体933円+税)

2012年4月19日 光文社古典新訳文庫編集部 |

南條竹則 Nanjo Takenori

ホーム > 翻訳者リスト>南條竹則

南條竹則 Nanjo Takenori
  • 新アラビア夜話
  • 木曜日だった男 一つの悪夢
  • 白魔
  • 天来の美酒/消えちゃった
  • 盗まれた細菌/初めての飛行機
  • 秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集
  • 人間和声
  • 不思議屋/ダイヤモンドのレンズ
  • カンタヴィルの幽霊/スフィンクス
  • ケンジントン公園のピーター・パン
『新アラビア夜話』(スティーヴンスン)
『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン)
『白魔』(マッケン)
『天来の美酒/消えちゃった』(コッパード)
『盗まれた細菌/初めての飛行機』(ウェルズ)
『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』(ブラックウッド)
『人間和声』(ブラックウッド)
『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』(オブライエン)
『カンタヴィルの幽霊/スフィンクス』(ワイルド) 『ケンジントン公園のピーター・パン』(バリー)
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。主な著書に小説『あくび猫』、エッセイ『恐怖の黄金時代──英国怪奇小説の巨匠たち』『ドリトル先生の英国』、『吾輩は猫画家である』、主な訳書に『ねじの回転』(ジェイムズ、共訳)、『D.G.ロセッティ作品集』(共訳)、『アーネスト・ダウスン作品集』、『新アラビア夜話』(スティーヴンスン、共訳)、『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン)、『白魔』(マッケン)、『天来の美酒/消えちゃった』(コッパード)、『秘書綺譚』(ブラックウッド)、『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』(オブライエン)、『エリア随筆』(ラム)など。

2011年9月25日 光文社古典新訳文庫編集部 |

《書評》『盗まれた細菌/初めての飛行機』ー 読売新聞 8月16日夕刊 

読売新聞 8月16日夕刊 読書欄の文庫紹介コーナーで『盗まれた細菌/初めての飛行機』を取り上げていただきました。

"... 趣向を凝らしたショートショートの妙、カフカ的な不条理を思わせる奇妙な笑い、ドタバタアクションを見ているような「初めての飛行機」など、バラエティに富んだ11編が楽しめる。"


cover107.jpg盗まれた細菌/初めての飛行機
ウェルズ/南條竹則 訳
定価(本体629円+税)

2010年8月19日 光文社古典新訳文庫編集部 |

7月の新刊ー『夜間飛行』『盗まれた細菌/初めての飛行機』発売!

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光文社古典新訳文庫の7月の新刊2冊、本日発売です!


『盗まれた細菌/初めての飛行機』
 ウェルズ/南條竹則 訳
 定価(本体629円+税)

"名作『タイムマシン』を生み出したSF作家でありながら、著者ウェルズは飛び抜けたユーモア感覚の持ち主でもありました。文明批判から、最新技術、世紀末のデカダンスまで、「笑い」で包み込む傑作短篇集!11篇収録。"

『夜間飛行』
サン=テグジュペリ/二木麻里 訳
定価(本体533円+税)

ホントに"命がけ"だった黎明期の飛行機

『ちいさな王子』で世界中に愛読者を持つサン=テグジュペリ。飛行士でもあった彼は、生涯「空を飛ぶこと」にこだわりつづけました。その情熱たるや、ちょっと驚きです。
まず、軍務時代にパイロットになれなければ、自費で高額のレッスンを受けて民間飛行免許を取得し、念願のパイロット候補生に。貴族の血を引くとはいえ、レッスン料を工面するのは簡単ではなかったようです。
除隊後も、郵便飛行士・水上機のテストパイロットとして勤務、作家デビュー後はmy飛行機を購入して......と飛行機に乗り続けます。驚異的なのは、その間、墜落・不時着・離陸トラブルなどなどに遭っていること(30代など、ほぼ2年に1回の割合!)。当時、飛行機に事故はつきものだったとはいえ、毎回よくぞ生還し、また空に戻っていったものだと、その不屈の精神に脱帽です。
サン=テグジュペリにとっては、「空を飛ぶこと」が生きることだったのでしょう。本書『夜間飛行』は、そんなことを改めて実感させる1冊です。

2010年7月 8日 光文社古典新訳文庫編集部 |


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