マルテは、きみだ!

マルテの手記

マルテの手記

リルケ    
松永美穂  訳   

パリを放浪する若き詩人の姿が目に浮かんでくる、鮮烈な新訳。
解説:斎藤環(精神科医)

作品

大都会パリをあてどなくさまようマルテ。「見る」ことを学ぼうと、街路の風景やそこに暮らす人々を観察するうち、その思考は故郷での奇妙な出来事や、歴史的人物の人生の中を飛び回り......短い断章を積み重ねて描き出される詩人の苦悩と再生の物語。ドイツ文学の傑作。解説は斎藤環さん。


物語

ヨーロッパ文化の中心地であるパリで目にする繁栄と雑踏。都市で浮遊する彼の精神がとらえた不安げで不確定な世界の印象を、ぜひ味わっていただきたい。テクストは、どれから読んでもいいし、飛ばしてしまってもいい。......これらのテクストの空間的・時間的拡がりを楽しみながら、マルテを追跡していただければ幸いである。(訳者まえがき)

[書評]
    図書新聞2014年8月30日/「『マルテの手記』の特質とは何かー忘却と回想を経て徐々に次元を深める輪が幾重にも広がってゆく筆法」(評者:岡田素之さん)
ライナー・マリア・リルケ    Rainer Maria Rilke
[ 1875 - 1926 ]    ドイツ語圏を代表する詩人。オーストリア=ハンガリー帝国領のプラハに生まれる。幼少の頃から詩を書き始め、18歳で初の詩集を出版。プラハ大学、ミュンヘン大学などで文学や美術と学び、立て続けに詩集を発表した。また、イタリア、ロシアなどを旅行し、作家のルー・アンドレアス=ザロメ、トルストイなどから大きな影響を受ける。1901年には彫刻家ロダンの弟子クララと結婚し、翌年に『ロダン論』執筆のためにパリ滞在。その後ヨーロッパ各地を転々としながら見聞を深め、1910年に自伝的な長篇小説『マルテの手記』を出版。第一次世界大戦勃発に伴い、自身も徴兵されウィーンで戦争資料室に勤務したが、まもなく除隊。1919年、スイスに転居。ポール・ヴァレリーの翻訳などを手がけながら、代表作『ドゥイノの悲歌』や『オルフォイスに捧げるソネット』などを完成させた。
[訳者] 松永美穂    Matsunaga Miho
東京大学大学院人文社会研究科博士課程満期単位取得。早稲田大学教授。訳書に『車輪の下で』(ヘッセ)、『朗読者』『逃げてゆく愛』(シュリンク)、『マルカの長い旅』(プレスラー)、『リスとお月さま』(メッシェンモーザー)、『マグノリアの眠り』(バロンスキー)などがある。