偉い人も僧侶も民も、ひと皮むけば “ただの人間”

今昔物語集

今昔物語集

作者未詳    
大岡 玲  訳   
今も昔も、ゴシップが好き。
エロ、欲、邪心に悪行…… 人間の生々しさを描いた仏教説話集!
作品
「仏教」説話だから抹香臭いお行儀の良い話が集められているのかといえば、大違い。この世のありとあらゆる「業」にまつわる面白い物語が目白押しなのだ。私がもくろんだのは、『今昔』の著者が心惹かれただろうさまざまな「人間の業」を取り出して並べてみる、ということだった。(訳者)
物語
芥川龍之介「鼻」「羅生門」の原話のみならず、エロに下卑た笑い、有名人の噂にスキャンダルの宝庫! 平安時代末期の民衆や勃興する武士階級、人間味あふれる貴族、僧侶らの姿をリアルに描く、「美しい ま々々しさ」(芥川)に満ちた日本最大の仏教説話集。厳選91話を収録。
目次
訳者まえがき
一 男と女の因果な世界

玄宗皇帝と楊貴妃の話(巻第十第七)/木の葉に詩を書いて川に流した女御の話(巻第十第八)/女の執念が凝り固まって大蛇になった話(巻第十四第三)/六の宮の姫君がはかなく世を去る話(巻第十九第五)/雨宿りをして不思議な契りを結ぶ話(巻第二十二第七)/蕪と交わった男が奇縁を結ぶ話(巻第二十六第二)/浮気な男が神社に詣でて美人を口説く話(巻第二十八第一)/不思議な女盗賊の話(巻第二十九第三)/大江山の藪の中で縛られた男の話(巻第二十九第二十三)/身代わりになって死んだ女の話(巻第二十九第二十八)/天下の色男がつれない女に恋い焦がれる話(巻第三十第一)/別れた夫婦が奇妙な再会をした話(巻第三十第五)/恋に目がくらんで姫君を誘拐した男の話(巻第三十第八)/海藻の生えた蛤で復縁する話(巻第三十第十一)/別れた女に再会して命を落とす話(巻第三十一第七)

二 武人の誉れ

夜の町から次々に家来があらわれる話(巻第二十三第十四)/一騎討ちをしたあと親友になった武者の話(巻第二十五第三)/親の仇を討ちとめた少年侍の話(巻第二十五第四)/大敗を喫した余五将軍が雪辱を果たす話(巻第二十五第五)/武人のひと言で盗人が人質を解放した話(巻第二十五第十一)/親子で馬盗人を射取る話(巻第二十五第十二)/利仁将軍が五位の侍に芋粥をご馳走する話(巻第二十六第十七)/産女の出る川を闇夜に渡った武人の話(巻第二十七第四十三)/見事な馬術を披露して逃げた東国の男の話(巻第二十八第三十七)/武人のすぐれた機略で命を拾った法師の話(巻第二十九第五)/死んだふりをした盗賊と武人の話(巻第二十九第十九)

三 僧侶も人の子、欲心・悪心あり

釈迦の高弟が異教徒と術比べをする話(巻第一第九)/舎利弗と目連が神通力を競う話(巻第三第五)/師が弟子の煩悩をためす話(巻第四第六)/弘法大師が修円僧都に挑む話(巻第十四第四十)/悪法師の企みから危うく逃れた若夫婦の話(巻第十六第二十)/恋の虜となって仏道修行にはげむ話(巻第十七第三十三)/染殿の后が霊鬼の執念にあやつられる話(巻第二十第七)/念仏の遊行僧にたちまち天罰が下った話(巻第二十九第九)/宿命には逆らえなかった阿闍梨の話(巻第三十一第三)

四 跳梁する霊鬼たち

鬼の唾で姿が見えなくなった男の話(巻第十六第三十二)/地神に追われた陰陽師の話(巻第二十四第十三)/安倍晴明が驚くべき術を披露した話(巻第二十四第十六)/恨み死にした妻が悪霊になる話(巻第二十四第二十)/人の顔を撫でる水の精が捕まった話(巻第二十七第五)/伴大納言が疫病神になった話(巻第二十七第十一)/お調子者の若者が鬼女に追われる話(巻第二十七第十三)/産んだ子を鬼女に食べられそうになる話(巻第二十七第十五)/古いお堂に泊まって恋人を失う話(巻第二十七第十六)/生き霊に褒美をもらう話(巻第二十七第二十)/猟師の母が鬼になる話(巻第二十七第二十二)/昔の妻と一夜共寝しておそれおののく話(巻第二十七第二十四)/三善清行が化け物屋敷に引っ越しをする話(巻第二十七第三十一)

五 異類と人間

釈迦一族の男が竜王の娘と結婚する話(巻第三第十一)/天竺の金持ちが牛に教えられる話(巻第四第三十三)/父である獅子を討ち取った息子の話(巻第五第二)/助けられた亀が恩返しをする話(巻第五第十九)/継母に殺されかけた子を救った亀の話(巻第十九第二十九)/狐のために写経供養をした男の話(巻第十四第五)/猿神が生け贄の男にこらしめられる話(巻第二十六第八)/武士をからかってひどい目にあった狐の話(巻第二十七第四十一)/信濃の国守になったさなだ虫の話(巻第二十八第三十九)/蜂を飼い慣らした商人の話(巻第二十九第三十六)/大事なところを蛇にしゃぶられた僧の話(巻第二十九第四十)/人間の女を妻にした犬の話(巻第三十一第十五)

六 滑稽は賢愚貴賤を問わず

孔子が大盗賊にやりこめられる話(巻第十第十五)/実因僧都が追剝をこらしめた話(巻第二十三第十九)/力士の妹が人質にされた話賢い女患者の話(巻第二十三第二十四)/賢い女患者の話(巻第二十四第八)/無学な男が和歌を詠みかけられて怒る話(巻第二十四第五十六)/名高い武士たちが牛車に酔う話(巻第二十八第二)/越前守為盛が臭い計略をめぐらす話(巻第二十八第五)/厳粛な場所で音高く鳴らしてしまった話(巻第二十八第十)/長すぎる鼻を板で持ちあげる話(巻第二十八第二十)/水漬け飯で痩せようとした中納言の話(巻第二十八第二十三)/米断ち聖人の噓が露見する話(巻第二十八第二十四)/笑った理由を説明できずに困った話(巻第二十八第二十五)/腹黒い金持ちが猫におびえる話(巻第二十八第三十一)/勇猛ぶった男が自分の影におびえる話(巻第二十八第四十二)/偉い学者が強盗に殺される話(巻第二十九第二十)

七 悪行の顛末

アジャセ王子が父王を殺す話(巻第三第二十七)/酔わせた象に罪人を踏み殺させる話(巻第四第十八)/父親と一緒に盗みをした息子の話(巻第十第三十二)/醍醐天皇が女の泣き声を聞いた話(巻第二十九第十四)/悪事が露見した検非違使の話(巻第二十九第十五)/大きな鐘をまんまと盗んだ話(巻第二十九第十七)/羅城門の二階で死人を見た盗人の話(巻第二十九第十八)/平貞盛が胎児の肝を抜き取らせた話(巻第二十九第二十五)/文書改竄を命じた書記を口封じに殺す話(巻第二十九第二十六)/干した魚の切り身を売る女の話(巻第三十一第三十一)

八 仏の救いは摩訶不思議

美女だけしかいない島が世にも恐ろしい場所だった話(巻第五第一)/捨てる定めの母をかくまった大臣の話(巻第五第三十二)/文字ひとつに救われた話(巻第十二第二十八)/わざと罪を犯して罪人を救う話(巻第十三第十)/亡くなった母親を写経で転生させる話(巻第十四第八)/世にもすぐれた人相見の話(巻第二十四第二十一)

付録『今昔物語集』関係図表・地図

 解説 大岡 玲
 年譜
 訳者あとがき
  
[ - ]   

[訳者] 大岡 玲    Ooka Akira
1958年、東京生まれ。小説家。東京外国語大学イタリア語科卒、同大学院修了。1989年『黄昏のストーム・シーディング』で三島由紀夫賞、1990年『表層生活』で芥川賞受賞。著書はほかに『ヒ・ノ・マ・ル』『森の人』『ブラック・マジック』『本に訊け!』『男の読書術』『たすけて、おとうさん』『不屈に生きるための名作文学講義 本と深い仲になってみよう』など多数。訳書に『ピノッキオの冒険』(コッローディ)、『アモンティラードの樽その他』(ポー)、『月と六ペンス』(モーム)、『王子シッダールタ』(ケンディ)全3巻などがある。
太平記(下)
太平記(下)

作者未詳

亀田俊和 訳

太平記(上)
太平記(上)

作者未詳

亀田俊和 訳

虫めづる姫君 堤中納言物語
虫めづる姫君 堤中納言物語

作者未詳

蜂飼耳 訳

ピノッキオの冒険
ピノッキオの冒険

カルロ・コッローディ

大岡 玲 訳