劇団NLT 『検察官』(作:ゴーゴリ 訳:浦雅春 演出:セミョン・アレクサンドロヴィッチ・ブーリバ)、11月17日(木)からの公演がいよいよ今週開幕です。 モスクワ芸術座の演出家セミョン・アレクサンドロヴィッチ・ブーリバさんを迎えて、劇団NLT初のロシア演劇となる今回の公演。演目が『検察官』に決まったとき、浦雅春さん訳の『査察官』を読んで、この訳だ! と即決したと制作の小川浩さん。175年前の戯曲を現代に生きるように、どう切り取るのか。ブーリバさんの提示した演出プランに劇団スタッフ全員が共鳴し、10月から稽古を重ねています。
モスクワ芸術座といえば、リアリズム演劇の演技システムであるスタニスラフスキー・システムが生み出された伝統ある劇場。その付属スタジオで教鞭をとるブーリバさんによる細やかな演出は、それ自体が芝居のように引き込まれるものでした。 「前のシーンを感じて自分のシーンを始めて」と声が飛び、「いいですよ、そのまま」と大きくうなづく。「真剣になりすぎないで。やっていることと考えていることは別。」
観客はいつだって芝居の参加者なんです
「初日に幕が上がって、観客の反応があって芝居は完成するのです。 稽古場で芝居に込めたアイデアが本番で観客に伝わり、そのアイデアについて考えてもらう。 観客席と舞台の上との相互関係ができて、"会話"ができる、それが芝居です。 早くお客さんとお会いしたい、そして共通言語を探したい。 観客はいつだって自分たちの共同制作に加わってくれる、芝居の参加者なんです。」とブーリバさん。
20歳の頃にもどったような気持ち
劇団NLTの公演は、2度目の客演となる原田大二郎さん。 演劇人としてのキャリア40年を越える原田さんが、ブーリバさんの稽古が始まってから、まるで20歳の頃にもどったような気持ちで芝居に向き合っていると話してくださいました。 「彼が最初にやったのは役者の状態をゼロにもどすこと。 これまで台本を最初から読んで役をつくってきたけど、台本はラストから読み込まなくてはいけないんだとわかった。市長が舞台に登場したときに、終幕の彼の姿も同時に見えるように演じなければ。」 大ベテランの木村有里さん、川端槇二さんも、ブーリバさんという"ロシア演劇の先生"を迎えて「学ぶということがこんなに苦しく楽しいことだったのかと改めて思う」と、初日への手応えを感じていらっしゃる表情が印象的でした。 みなさん、とにかく時間が足りない、もっともっと稽古がしたいとおっしゃる。その熱意。 「すばらしい時間を過ごしています。」と原田さん。 ぜひ、『検察官』の共同制作者として、劇場へ足をお運びください! 今週11月17日から23日まで。会場は銀座博品館劇場です。
左から、市長役の原田大二郎さん、慈善病院長役の川端槇二さん、市長の妻アンナ役の眞継玉青さん、市長の娘マリヤ役の飯田千尋さん。 眞継玉青さんはSTORY9月号にもご登場です!
「この町に検察官がやって来る」
お忍びの検察官が来るという噂が広まり、不正と賄賂にどっぷりはまった市長をはじめ小役人たちがあわてふためく。"大ボラ吹き"フレスタコフがなぜか検察官に間違われて、ホラ話がどんどんふくれ上がっていく...
『鼻/外套/査察官』
ゴーゴリ/浦 雅春 訳
定価(本体648円+税)