この『三文オペラ』に関われた幸せを、稽古の中でますます実感しています。
これだけの作品なので、どうやって全体を構築していくか、そのプロセスの全体を仕切る芸術監督で演出家の宮田慶子さんの、段取りの見事さと気合いの強さ、気風の良さにまずは真から感心。キャストは早めに決まっていたので、5月に台本作りの読み合わせと相談を新国立劇場の制作・茂木令子さんを入れた3人で集中的に行った。
6月には上演台本を作成して全員に配布、7月半ばの顔合わせから最初の1週間は集中的な歌稽古。その後10日ほど歌と台本解釈も加えた全員の読み合わせをして、8月に入ったらもう稽古場に装置が組まれて立ち稽古の開始である。8月半ばには粗立ちで(?)、大体の流れが浮かび上がってきた。
何せ、役者だけで40余名。ピーチャム夫妻を中心とする泥棒ワールドが10数名、メッキースの泥棒団が10名ほど、ジェニーを中心とする娼婦ワールドも10名近い。背後に警視総監ブラウン率いる警官たち――それぞれがくんずほぐれつする中で見えてくるこの世の集団力学、いわば民衆のエネルギーの化身のような『三文オペラ』という龍=ドラゴンが生命を得てうごめき始める。
いま、そこまで来ただけでワクワクなのだが、8月末からは生演奏の9名のバンドが入って、大きな稽古場も、現場監督のような宮田さんの名仕切りでも大変になるだろう。
9月からセットを組んだ中劇場で稽古を開始。9月10日の初日には、魅力あふれた役者さんたちがそれぞれの顔と演技を競う『三文オペラ』ドラゴンが、大きな中劇場狭しと、どんな姿で果たして、立ち現われてくるだろう。どんなメッキースとポリーとジェニーが登場するか。幕切れは? 愛らしく、そしてしたたかに生きる劇中の女性たちのウーマンパワー炸裂となるか? あれもこれも、乞うご期待!!