2014.09.05

この『三文オペラ』に関われた幸せを、稽古の中でますます実感ー訳者・谷川道子さん

この『三文オペラ』に関われた幸せを、稽古の中でますます実感しています。

これだけの作品なので、どうやって全体を構築していくか、そのプロセスの全体を仕切る芸術監督で演出家の宮田慶子さんの、段取りの見事さと気合いの強さ、気風の良さにまずは真から感心。キャストは早めに決まっていたので、5月に台本作りの読み合わせと相談を新国立劇場の制作・茂木令子さんを入れた3人で集中的に行った。

6月には上演台本を作成して全員に配布、7月半ばの顔合わせから最初の1週間は集中的な歌稽古。その後10日ほど歌と台本解釈も加えた全員の読み合わせをして、8月に入ったらもう稽古場に装置が組まれて立ち稽古の開始である。8月半ばには粗立ちで(?)、大体の流れが浮かび上がってきた。

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この日(8月5日)は、第一幕第三景の稽古。ビーチャム商会の乞食の衣装部屋。
左からポリー役・ソニンさん、ピーチャム役・山路和弘さん、
ピーチャム夫人役・あめくみちこさん

何せ、役者だけで40余名。ピーチャム夫妻を中心とする泥棒ワールドが10数名、メッキースの泥棒団が10名ほど、ジェニーを中心とする娼婦ワールドも10名近い。背後に警視総監ブラウン率いる警官たち――それぞれがくんずほぐれつする中で見えてくるこの世の集団力学、いわば民衆のエネルギーの化身のような『三文オペラ』という龍=ドラゴンが生命を得てうごめき始める。

いま、そこまで来ただけでワクワクなのだが、8月末からは生演奏の9名のバンドが入って、大きな稽古場も、現場監督のような宮田さんの名仕切りでも大変になるだろう。

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娘が本当にメッキースと結婚したと聞いて気絶したピーチャム夫人に
気付け薬のブランデーを渡すポリー。

9月からセットを組んだ中劇場で稽古を開始。9月10日の初日には、魅力あふれた役者さんたちがそれぞれの顔と演技を競う『三文オペラ』ドラゴンが、大きな中劇場狭しと、どんな姿で果たして、立ち現われてくるだろう。どんなメッキースとポリーとジェニーが登場するか。幕切れは? 愛らしく、そしてしたたかに生きる劇中の女性たちのウーマンパワー炸裂となるか? あれもこれも、乞うご期待!!

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この大きな稽古場に、8月末から生演奏の9名のバンドが入ります。
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★製作発表会の記事はこちら
シアターガイド:「池内博之主演×宮田慶子演出 新国立劇場2014/2015シーズン『三文オペラ』製作発表会」
新国立劇場「三文オペラ」ウェブサイト
★光文社古典新訳文庫8月刊『三文オペラ』(ブレヒト/谷川道子・訳)発売中です。「舞台はロンドン。貧民街のヒーロー、メッキースは街で偶然出会ったポリーを見初め、その日のうちに結婚式を挙げる。ところが彼女は、乞食の友商会の社長の一人娘だった......。多様な音楽様式と軽妙なドラマ構成で書かれたブレヒトの代表作」

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三文オペラ

  • ブレヒト/谷川道子 訳
  • 定価(本体900円+税)
  • ISBN:75296-5
  • 発売日:2014.8.7