著者年譜

アリストテレス ΑΡΙΣΤΟΤΕΛΗΣ

『ニコマコス倫理学』

年	歳	出来事
紀元前469年		ソクラテス、アテナイに生まれる。前431年、アテナイとスパルタのあいだでペロポネソス戦争勃発。前427年、プラトンがアテナイに生まれる。前404年、アテナイがスパルタに降伏し、ペロポネソス戦争はアテナイの敗北で終結。敗戦後のアテナイでは、クリティアスを中心とする親スパルタ派30人の独裁政権が樹立される（翌年の前403年に崩壊）。前399年、ソクラテス、政治家アニュトスを後ろ盾とする詩人メレトスにより不敬神の罪で告発される。裁判が行われ、死刑判決が下される。1月後の3月に刑死。前387年、プラトンがアテナイ郊外に学園アカデメイア創設。
紀元前384年	プラトン43歳	アリストテレス、北部ギリシャのカルキディケ地方スタゲイラ（今日のテッサロニキ付近の町）に生まれる。父はニコマコス、母はファイスティスで、両親ともイオニア系ギリシャ人の医者の家系。父ニコマコスも医者であり、マケドニア王アミュンタス3世の侍医となった。父母はともにアリストテレスが若い頃死去。
紀元前367年	プラトン60歳	後見人のすすめでアリストテレスはアテナイのプラトンの学園アカデメイアに入学、プラトンの弟子となる。この年からアカデメイアを離れる前347年までは、アリストテレスの「修業時代」と呼ばれる。プラトンはこの年、弟子ディオンによりシチリア島シラクサに招聘されていたため、アカデメイアにはいなかった。シラクサでは政争が起こりディオンは国外追放となり、プラトンも1年あまりシラクサ王ディオニュソス2世により監禁される。その後解放され帰国し、『ソフィスト』『政治家』『ティマイオス』『ピレボス』『法律』などの後期対話篇を執筆。
	アリストテレス17歳
紀元前359年	プラトン68歳	マケドニア王フィリポス2世即位。
	アリストテレス25歳	マケドニア王家に王子アレクサンドロス（後の大王、アレクサンドロス3世）生まれる。
紀元前356年	プラトン71歳
	アリストテレス28歳
紀元前348年	プラトン79歳	マケドニアのフィリポス2世、ギリシャ北部のオリュントスを攻略する。この1件でアテナイには反マケドニア気運が高まった。
	アリストテレス36歳
紀元前347年	プラトン80歳	プラトン死去。アリストテレスは学友クセノクラテスとともに小アジアのアッソスの支配者ヘルミアスに招かれ、厚遇をうけて研究を行う。この年からアテナイで学園リュケイオンを創設するまでの十数年間の時期は、アリストテレスの「遍歴時代」と呼ばれる。アカデメイアでは第2代学頭選出の際アリストテレスとクセノクラテスも候補となったが、プラトンの甥スペウシッポスが学頭となって引き継ぐ。学園アカデメイアは後529年まで存続した。
	アリストテレス37歳
紀元前345年	アリストテレス39歳	ヘルミアス、ペルシャ軍の捕虜となる。マケドニアとの同盟の密約について白状するよう拷問され、やがて処刑される。アリストテレスは敬愛する友人で恩人のヘルミアスの死を悼み、かれを讃える詩を作るが、その中の表現が22年後の前323年にアテナイで、不敬神にあたるとして告発者に利用された。アリストテレスは翌年、友人テオフラストスの故郷レスボス島ミュティレネに移り、研究を続行するとともに、ヘルミアスの養女（姪）ピュティアスと結婚する。ピュティアスはアリストテレスよりかなり前に亡くなり、アリストテレスはその後ヘルピュリスという女性（奴隷の身分の人）と暮らす。ピュティアスの産んだ娘のほか、ニコマコスという名の男児がアリストテレスにはいたが、ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシャ哲学者列伝』「アリストテレス」の項目の中に伝えられるかれの遺言状の言葉を信ずるなら、母親はヘルピュリスのほうである。この息子ニコマコスは夭折したと伝えられる。アリストテレスは後にミュティレネから1度故郷スタゲイラに戻る。
紀元前343年	アリストテレス41歳	アリストテレスはフィリポス2世の要請によりマケドニアに移り、13歳の王子アレクサンドロスの家庭教師になる。アリストテレスのマケドニア滞在はフィリポス2世暗殺、アレクサンドロスの王位継承まで続く。
紀元前341年	アリストテレス43歳	この年、ヘレニズム期を代表する学派のひとつであるエピクロス学派を開いた古代快楽主義者エピクロスが、サモス島に生まれる。
紀元前339年	アリストテレス45歳	アカデメイア第2代学頭スペウシッポス死去。第3代学頭選出の際もアリストテレスは候補に挙がったが、学友のクセノクラテスが就任。
紀元前338年	アリストテレス46歳	カイロネイアの戦いでフィリポス2世のマケドニアがギリシャ連合軍を破る。
紀元前336年	アリストテレス48歳	フィリポス2世が暗殺され、20歳のアレクサンドロスがマケドニア王となる。
紀元前335頃	アリストテレス49歳	アリストテレスはアテナイに戻り、学園リュケイオンを創設する。これ以後をアリストテレスの「学頭時代」と呼ぶ。この頃、後にヘレニズム期の代表的哲学流派のストア派の始祖となったゼノン（「ストアのゼノン」ないし「キティオンのゼノン」）がキプロス島キティオンに生まれる。
紀元前334年	アリストテレス50歳	アレクサンドロス大王の東方遠征開始。
紀元前331年	アリストテレス53歳	アレクサンドロス大王、エジプトを占領。エジプトでは、後に文化の1大中心地となるアレクサンドリア市の建設が始まる。
紀元前330年	アリストテレス54歳	アケメネス朝ペルシャ帝国滅亡。
紀元前327年	アリストテレス57歳	アレクサンドロス大王に同行してペルシャに赴いていた歴史家でアリストテレスの甥カリステネスが、アレクサンドロス大王により大逆罪とされ、拷問を受けた末に死ぬ。
紀元前323年	アリストテレス61歳	アレクサンドロス大王、遠征先のバビロンで病を得て33歳の若さで急逝。激烈な後継者戦争が勃発する。アテナイでは反マケドニア運動が起こり、アリストテレスは不敬神で告発される。
紀元前322年	アリストテレス62歳	前年末かこの年の初めに、アリストテレスはリュケイオンを第2代学頭テオフラストスに委ね、母の生まれ故郷ボイオティアのカルキスに移るが、まもなく病気で没する。この年マケドニアのアンティパトロスがアテナイに占領体制を布き、アテナイ民主政は終わりを迎える。
紀元前318年		アテナイ最後の有力将軍で政治家のフォキオンが市民に不敬神で訴えられ、裁判の結果有罪となり刑死する。
紀元前288年		リュケイオン第2代学頭テオフラストス死去（1説では前285年）。ストラトンが第3代学頭となる。
紀元前40～20年頃		リュケイオンの学頭、ロドス島出身のアンドロニコスにより、アリストテレス全集（Corpus Aristotelicum）が編集され、公刊される。この著作集に、『ニコマコス倫理学』や『形而上学』『自然学』『政治学』『詩学』など、今日著名なアリストテレスのリュケイオンにおける講義録的主要著作はすべて入る。この著作集公刊以前には、リュケイオンの外部のローマなどでは、アリストテレスは対話篇形式の今日散逸している別の作品群によってのみ知られていた。