1941年、被占領下の上海。いまや火の車となった名家出身のヒロインは、兄夫婦たちから疎まれるバツイチ出戻り。ある日妹の見合いに同行した彼女は、イギリス育ちの青年実業家に見初められ、香港に招かれることに。果たして勝気なお嬢様は、プレイボーイからプロポーズの言葉を引き出すことができるのか......? かつてオールド上海に彗星のごとく登場したのが張愛玲(英語名アイリーン・チャン)です。今回の読書会では、魯迅と並び20世紀中国文学を代表する彼女の傑作「傾城の恋」を取り上げます。緊張感のあるスタイリッシュな会話が繰り広げられるこの作品は、もちろんラブコメディとしても読めますし、戦争とお金、家族と個人との問題を扱ったシリアスな小説という面もあります。華麗な文体と巧みな構成で書かれたこの恋愛小説の魅力について、いろいろな角度から訳者の藤井さんに語っていただきます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)