19世紀フランスでは、「新聞連載」という新しい形態の発明により、多くの一般市民が安価に娯楽小説を楽しめるようになり、それは作家にとっても実入りのいい仕事になりました。そんな新聞連載の寵児の一人がアレクサンドル・デュマであり、その代表作こそが『モンテ゠クリスト伯』です。そのドラマティックな展開と、情感豊かな描写によって、世界中が魅了され、翻訳・翻案、映像化や舞台化は枚挙にいとまがありません。
将来を嘱望された若き船乗りエドモン・ダンテスは、美しいメルセデスとの結婚直前、嫉妬した同僚の謀略に遭い逮捕される。海に浮かぶ島の監獄で、14年もの絶望的な生活を強いられるが、ある日他の囚人が壁を削る音に気づき……。地獄に突き落とされた青年の運命は?
今回の新訳では、新聞読者の興味を引き続けた物語の面白さと、情感の豊かさはそのままに、よりクリアに、生き生きと壮大な物語を楽しめます。全6巻とまだ先の長いシリーズですが、刊行開始を機に、本書の楽しみ方、ここまでの話の読みどころ、知っておくといい時代背景などについて、翻訳者の前山さん自身にたっぷりと語って頂きます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)
※『モンテ゠クリスト伯1』は6月11日発売です。