二人の青年は、愛の深さゆえ傷つき、傷つけあう......

モーリス

モーリス

フォースター    
加賀山卓朗  訳   

伝統的規範と自らの性の狭間で苦悶する男たちの姿を描いた、禁断の恋愛小説

作品

二十世紀初頭、イギリスの法律では同性愛は犯罪とされていたため、本作は作家の死後、 一九七一年になってようやく発表された。作家自身の性的指向が明らかとなった衝撃作ではあるが、その繊細な心理描写、物語展開の妙、耽美な世界観は、世界中に幅広い読者を獲得し、映画化もされた。


物語

凡庸な少年時代から、モーリスは自分の願望を知ってはいた。ケンブリッジ大学の学舎で知的なクライヴと懇意になり、戯れに体が触れあううち、彼の愛は燃え上がる。クライヴもまた愛の言葉を口にするが......欲望のままに生きることが許されない時代に生きる青年の苦悩と選択を描く。


解説

松本 朗(上智大学文学部教授)

〈あとがきのあとがき〉あらゆるしがらみを超えて、人と人が向き合ったらどうなるか?──フォースター『モーリス』の訳者・加賀山卓朗さんに聞く
E.M.フォースター    Edward Morgan Forster
[ 1879 - 1970 ]    英国の小説家。ケンブリッジ大学キングズ・カレッジ卒業。二十代後半から三十歳までに『天使も踏むを恐れるところ』『眺めのいい部屋』『ハワーズ・エンド』などを刊行し、作家としての名声を得る。ほかに批評家に絶賛された『インドへの道』、執筆当時の英国では犯罪であった同性愛を描いて死後に発表された『モーリス』(本書)などがある。1969年には、英国でもっとも名誉とされるメリット勲章を受章した。
[訳者] 加賀山卓朗    Kagayama Takuro

1962年生まれ。翻訳家。おもな訳書に、『オリヴァー・ツイスト』(ディケンズ)、『ミッション・ソング』『スパイたちの遺産』(ともにル・カレ)、『ヒューマン・ファクター』(グリーン)、『夜に生きる』(ルヘイン)、『三つの棺』(カー)、『チャヴ』(ジョーンズ/依田卓巳名義)などがある。