恋の悲劇と喜劇が交錯する、度肝を抜く面白さ!!

好色五人女

好色五人女

井原西鶴    
田中貴子  訳   
駆け落ち、心中、不義密通……
恋に賭けた女のリアルを描いた五つの個性豊かなストーリー
作品
西鶴独自の趣向や修辞、織り込まれた古典の文脈を咀嚼し再現した、臨場感たっぷりの鮮やかな訳文! 「噺家の口調を意識したのは、西鶴のスピーディーでユーモラスな語りの面白みを反映させたかったからなのである」(訳者)
物語
〝お夏清十郎〟や〝八百屋お七〟など、実際の事件をモデルに西鶴が創り上げた極上のエンターテインメント小説五作。鋭い人間観察が可能にした性愛と「義」をめぐる物語から、はかない今を恋に賭ける女たちのリアルが浮かび上がる。噺家の語りを駆使した、臨場感と迫力満載の新訳!
目次
 
口上
  • 巻一 姿やさし姫路の清十郎物語
  • 巻二 情にまどう樽屋の物語
  • 巻三 吉凶占う暦屋物語
  • 巻四 恋草束ねた八百屋物語
  • 巻五 恋の山積もる源五兵衛物語

分別忘れる恋の乱痴気さわぎ・西国随一の遊び人のこと

ほどいた帯からぞろぞろ恋文

獅子舞は太鼓に寄り、男は女に寄る

状箱(しょうばいどうぐ)は宿に忘れた男

命のうちの七百両の金

恋に泣く涙の井戸替え

踊りの輪はくずれて、夜更けに出る化物

京の水ももらさぬ二人の仲、こっそり合(逢)い釘

木っ端は燃える胸の焚きつけになる新世帯

木屑の杉楊枝と同じく短い、一寸先の命

関守がする美女の品定め

たばかられた夢枕

人をだました湖

小判を見知らぬ田舎茶屋

立ち聞きした身の上話

真っ暗な大晦日は恋の闇

春呼ぶ雷もふんどし着けたお方となら怖くない

雪の夜に貸してやった宿

この世を見納める桜花

故あって坊主の急ごしらえ

はかなく絶えるデュエットの笛

もろい命を取る鳥さし

両手に花がぱっと散る衆道

情けは男と女の取り違え

金銀もありすぎは困るもの

 解説 田中貴子
 『好色五人女』読書案内
 年譜
 訳者あとがき
              
井原西鶴    Ihara Saikaku
[ 1642〈寛永19〉 - 1693〈元禄6〉 ]   

江戸時代前期を代表する俳諧師、浮世草子作者。大坂の商家に生まれる。39歳で、一日に4000句を一人で詠む「矢数俳諧」に成功して名声を得た。41歳時に浮世草子『好色一代男』を出版。当時の出版界に衝撃を与え、以降人気作家となる。『好色五人女』『好色一代女』『男色大鑑』『日本永代蔵』『武家義理物語』『世間胸算用』など、次々に問題作を刊行し、近代以降の作家にも多大な影響を及ぼす。52歳歿。

[訳者] 田中貴子    Tanaka Takako

1960年、京都府生まれ。日本文学研究者 (中世)。甲南大学教授。1988年、広島大学大学院文学研究科修了。博士 (日本文学)。著書に『「渓嵐拾葉集」の世界』『外法と愛法の中世』『日本〈聖女〉論序説 斎宮・女神・中将姫』『鏡花と怪異』『いちにち、古典 〈とき〉をめぐる日本文学誌』など多数。