ハリエット・ビーチャー・ストウの小説『アンクル・トムの小屋』は、奴隷制度の非人道性を告発し、米国社会を変革した、アメリカ文学の記念碑的作品と言われています。かつては日本でも子供向けに翻案されたものがよく読まれましたが、原作は物語の展開に意外とメリハリがあって、読む者の感情を揺さぶる優れた長篇小説です。
正直で有能、分別と信仰心を持つ奴隷頭のトムは、ケンタッキーのシェルビー農園で何不自由なく暮らしていたが、主人の借金返済のために、奴隷商人に売却されることに。トムが家族との別離を甘受する一方、幼子を売られることになった女奴隷イライザは、自由の地カナダへの逃亡を図る。……
本作はどのように書かれ、読まれ、世界を変えていったのでしょうか。また、奴隷解放の一助となったはずの本書が、昨今では黒人の間でも批判の的となることが多いのはなぜなのでしょうか。今回、本作を新訳された土屋京子さんをお迎えして、知られざる本書の魅力、そしていまだ根深い差別の意識などについて、たっぷりと語って頂きます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)