田舎町の冴えない医者シャルルとの平凡で退屈な結婚生活にエマは倦んでいた。理想と現実とのギャップ。満たされない心。彼女はやがて夫の目を盗んで情事を重ね、散財を繰り返し、膨大な借金を抱えてしまい……。
近代フランス文学を代表する傑作と評される本作は、表層的なあらすじだけたどれば、“いかにもありがちな不倫話”ということになりますが、それをフローベールは芸術にまで昇華させ、自身の代表作と呼ばれるほどの小説に仕上げました。ストーリーの展開はもちろんですが、登場人物の細やかな心理描写や、視覚、聴覚に訴える情景描写、あるいは革新的な技法の数々など、『ボヴァリー夫人』は「これぞ小説!」を実感できること間違いなしの傑作です。今回の新訳では作者フローベールの深意、意向、意図を可能なかぎり反映した訳文を心掛けた、と語る訳者の太田浩一さんをお迎えして、『ボヴァリー夫人』の魅力を、フローベールの文体の魅力と併せて存分に語っていただきます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)