悦楽の入口は不意に開き、乱暴に閉じられる──

すべては消えゆく マンディアルグ最後の傑作集

すべては消えゆく マンディアルグ最後の傑作集

マンディアルグ    
中条省平  訳   
性と死の目眩くようなコントラスト──
「シュルレアリスム最後の作家」の精髄3篇。
作品
私が中学生から高校生だったころ、マンディアルグは最愛の小説家でした。彼の書いたものの翻訳ならば断簡零墨に至るまで収集し、何度も読みかえしていました。この熱狂は、生田耕作と澁澤龍彦という尊敬するフランス文学者が愛情と誠意をこめて、彼の小説を優美な日本語に移してくれたことが強い動機になっていました。 (訳者)
物語
パリの地下鉄、隣の席で化粧を始めた女の姿態に目を奪われたユゴーは、慎みとは無縁な彼女の手に思わず接吻してしまうが......。芳醇な性の悦楽が思わぬ展開を見せる表題作、美少女との甘い邂逅から一気に死の淵へと投げ出される「クラッシュフー」など、独自の世界観きわだつ3篇。
目次
クラッシュフー
催眠術師
すべては消えゆく
 解説 中条省平
 年譜
 訳者あとがき
アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ    André Pieyre de Mandiargues
[ 1909 - 1991 ]   

フランスの小説家。パリに生まれ、若い頃から写真家のカルティエ=ブレッソンや、シュルレアリスム周辺の芸術家たちと交友を深める。1946年に初の作品集『黒い美術館』を発表。その後も『城の中のイギリス人』、『海の百合』、『燠火』『オートバイ』(映画化邦題『あの胸にもういちど』)、『余白の街』(ゴンクール賞受賞)などの作品を発表し、長く華麗な文体で耽美と暴力とエロスを描く作家として人気を博した。1987年発表の『すべては消えゆく』は遺作。また、三島由紀夫の戯曲『サド侯爵夫人』をフランス語訳したことでも知られる。

[訳者] 中条省平    Chujo Shohei
1954年生まれ。学習院大学教授。仏文学 研究のほか、映画・文学・マンガ・ジャズ 評論など多方面で活動。主著に『カミュ伝』『恋愛書簡術』『反=近代文学史』『フランス映画史の誘惑』。訳書に『マダム・エドワルダ/目玉の話』(バタイユ)、『恐るべき子供たち』(コクトー、共訳)、『肉体の悪魔』 (ラディア)、『花のノートルダム』(ジュネ)、『消しゴム』(ロブ=グリエ)、『狭き門』(ジッド、共訳)、『にんじん』(ルナール)、『すべては消えゆく』(マンディアルグ)ほか多数。