本邦初の“全巻通し”の完全版!

エウデモス倫理学(上)

エウデモス倫理学(上)

アリストテレス    
渡辺邦夫  訳    加藤喜市  訳    立花幸司  訳   
千葉雅也氏推薦!
『ニコマコス倫理学』と共通の章を持つが、本書では、「善く、美しく」生きることを「快」とする倫理を、より日常的な考察として語っているように思われる。アリストテレス倫理学のもうひとつの姿。
内容
『ニコマコス倫理学』と並ぶアリストテレス倫理学の主著。幸福の特性である善と美と快の関係について、人柄の徳と行為について、幸福を実現するうえで重要な「善美」の徳をどう身に付けるかについて考察する。自発的行為の本質についてなど、その独自性が注目を集める重要書目。
作品
本訳は、『エウデモス倫理学』を『ニコマコス倫理学』との共通部分を含めた一つの書物として出版する点で、既訳とは異なる独自の試みと言えます。『ニコマコス倫理学』の単なる補完としてではなく、また専門の研究者のための学問的資料のようなものとしてでもなく、『エウデモス倫理学』という一つの完結した倫理学作品としてお読みください。(訳者)
 
目次
凡例
訳者まえがき 渡辺邦夫
第一巻 幸福について
第一章 善と美と快という幸福の特性と、幸福になる方法
第二章 幸福と、幸福の諸条件との区別が必要であること
第三章 幸福の議論で検討すべき見解と、そうでない見解
第四章 幸福の決定要因──徳か、叡智か、快楽か?
第五章 徳と叡智と快楽にかんして追求すべきいくつかの問いについて、またとくに、ソクラテスの徳と知識を同一視する見解について
第六章 探究の方法と注意点
第七章 「人間にとって為しうる善」としての幸福
第八章 「最善のもの」についての三見解のうち、「諸行為の究極目的こそ最善のものだ」とする見解を採用すべきであること
第二巻 人柄の徳と、行為の構造にかんする総論
第一章 幸福とは、完全な徳に基づく完全な生の現実活動であり、人柄の徳とは、分別に従い、感情と快苦にかかわる、魂の最善の性向であるということ
第二章 人柄とは何か? 人柄にかかわる性向はいかなるものか?
第三章 徳と悪徳を、感情の超過、不足、および中間性によって説明する
第四章 人柄の徳と快苦
第五章 超過と不足はつねに対等に問題になるわけではなく、片方のみが自分の傾向と自然的な傾向から問題になり、徳の反対とみなされる場合もあること
第六章 自分が始まりとなる行為は自分次第であり、したがって徳も悪徳も自発的なものであること
第七章 自発的行為とは何か?(1)自発的行為は「欲求に基づく行為」ではないということ
第八章 自発的行為とは何か?(2)自発的行為は強制による逸脱を免れた、行為者内部の始まりによる行為であるということ
第九章 自発的行為とは何か?(3)自発的行為は単純に「思考に基づく行為」ではないが、行為を構成する要素にかんする無知がなく、自分の力により為す行為であるということ
第一〇章 選択とは、自分次第である事柄への、思案を経て生じた欲求であること
第一一章 徳は行為の目的を正しいものとし、その目的のためのもろもろの事柄を正しいものにする能力は、徳とは別のものだということ
第三巻 いくつかの人柄の徳、もしくは賞讃に値する中間性について
第一章 勇気について
第二章 節制と放埒について
第三章 温和さと気難しさについて
第四章 気前良さについて
第五章 志の高さについて
第六章 物惜しみのなさについて
第七章 ほかの賞讃される性向と非難される性向について、また、賞讃される性向が徳になるのは、叡智がそれらに伴う場合であるということについて
第四巻 正義について
第一章 対人関係において発揮される徳を総称して「正義の徳」と言うことがあること
第二章 対人関係における徳としての全体的正義と、ほかの徳と区別される部分的正義
第三章 部分的正義の第一の種類:「配分的正義」
第四章 各人を等しく一人として考える第二の種類:「矯正的正義」
第五章 正義の議論における「応報」という考え方について
第六章 限定ぬきの正しさと、国における正しさ
第七章 正しさにおける、自然本性的なものと取り決めによる法的なもの
第八章 加害の三種:過失と、不正行為と、不正の悪徳による不正行為
第九章 正義をめぐるいくつかの哲学的難問(「自発的に不正をされることがあるか?」「自分自身に不正を為すことは可能か?」など)について
第一〇章 法の文言どおりにいかない事態に対応する、高潔な人による「衡平」の実現の重要性について
第一一章 「自分に対する不正」は、文字どおりの意味においては不可能であることの最終議論
第五巻 知的な徳
第一章 学問的に知る部分と推理して知る部分
第二章 理論的思考と実践的思考
第三章 学問的知識について
第四章 技術について――技術と制作
第五章 思慮深さについて――思慮深さと行為
第六章 知性について
第七章 知恵について――思慮深さとの関係から
第八章 思慮深さの分類と、知的な徳としての思慮深さの特徴
第九章 考え深さについて
第一〇章 物わかりのよさについて
第一一章 察しのよさと思いやりからみた思慮深さの特徴
第一二章 知恵と思慮深さをめぐるいくつかの難問――思慮深さと知恵が必要な理由
第一三章 知恵と思慮深さをめぐるいくつかの難問(続き)――思慮深さと人柄の徳の再検討
 解 説 渡辺邦夫
アリストテレス    ΑΡΙΣΤΟΤΕΛΗΣ
[ 384 B.C. - 322 B.C. ]    古代ギリシャを代表する哲学者。ギリシャ北部のスタゲイラに生まれ、17歳ころアテナイのプラトンの学園アカデメイアに入学、20年間研究生活を送る。プラトンの死後小アジアなどの遍歴時代を経て、50歳近くでアレクサンドロス王の庇護のもとでアテナイに学園リュケイオンを創設し、学頭として研究と教育に没頭した。かれの著作は講義ノートが大部分であり、内容別に整理され、学問方法論、理論学の『形而上学』『魂について』、実践学の『二コマコス倫理学』『政治学』、制作学の『詩学』などがある。
[訳者] 渡辺邦夫    Watanabe Kunio
1954年生まれ。茨城大学人文学部教授。博士(学術)。東京大学大学院比較文学比較文化専門課程博士課程単位取得退学。古代ギリシャ哲学専攻。著書に『アリストテレス哲学における人間理解の研究』、訳書に『メノン』(プラトン)『ニコマコス倫理学』(アリストテレス)がある。
[訳者] 加藤喜市    Kato Kiichi

1986年生まれ。東京大学文学部助教。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(文学)。倫理学・倫理思想史専攻。

[訳者] 立花幸司    Tachibana Koji
1979年生まれ。熊本大学文学部准教授、ジョージタウン大学メディカルセンター国際連携研究員。東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了、博士(学術)。哲学・倫理学専攻。訳書に『ケンブリッジ・コンパニオン 徳倫理学』『ニコマコス倫理学』(アリストテレス)など。