今年生誕150年を迎える伝説的な作家ジャック・ロンドンは、海洋冒険小説『海の狼』や『野性の呼び声』『白い牙』などでよく知られていますが、スポーツ全般を好んだこともあり、とりわけボクシングとは縁が深く、新聞に試合の記事を数多く書いています。というものの、ボクシングを題材にして小説の形で発表したのはわずか四作だけで、今回の『試合/獰猛なる野生児』にはその四作すべてを収録しました。
愛する女性との結婚を機に引退する若いボクサーが最後の戦いに臨む「試合」。かつてのスター選手で、今は高齢ゆえに試合の組まれることのめったにない主人公が、貧窮のなか若い選手と対戦する「一枚のステーキ」。圧政下のメキシコ人民の苦難を背景に、悲愴な覚悟で戦う無名のボクサー「メキシコ人」。運に恵まれず引退したボクサーの父に、人里離れた山中で育てられ、訓練を受けた息子が主人公の「獰猛なる野生児」。いずれの作品も、抜群のストーリー展開と、ボクサーたちの覚悟と悲哀が細やかに、かつ緊迫感ある筆致で描かれています。今回の読書会では、ボクシングジムに通った経験を活かし翻訳にあたった訳者の牧原勝志さんをお迎えして、本書の魅力について存分に語っていただきます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)