命がけで使命を全うしようとする男たち

夜間飛行

夜間飛行

サン=テグジュペリ    
二木麻里  訳   

作家サン=テグジュペリの実体験が生んだ航空小説の傑作!

物語

20世紀初頭の郵便飛行に携わる者は、「自分達が歴史を作る」という信念と誇りを持っていた。ときに苛酷な決断を下さざるをえない、孤独な世界で彼らは戦い続ける。
『ちいさな王子』の著者、もう一つの傑作。1931年刊。


内容

南米大陸で、夜間郵便飛行という新事業に挑む男たちがいた。ある夜、パタゴニア便を激しい嵐が襲う。生死の狭間で懸命に飛び続けるパイロットと、地上で司令に当たる冷徹にして不屈の社長。命を賭して任務を遂行しようとする者の孤高の姿と美しい風景を詩情豊かに描く。


ホントに"命がけ"だった黎明期の飛行機

『ちいさな王子』で世界中に愛読者を持つサン=テグジュペリ。飛行士でもあった彼は、生涯「空を飛ぶこと」にこだわりつづけました。その情熱たるや、ちょっと驚きです。

まず、軍務時代にパイロットになれなければ、自費で高額のレッスンを受けて民間飛行免許を取得し、念願のパイロット候補生に。貴族の血を引くとはいえ、レッスン料を工面するのは簡単ではなかったようです。

除隊後も、郵便飛行士・水上機のテストパイロットとして勤務、作家デビュー後はmy飛行機を購入して......と飛行機に乗り続けます。驚異的なのは、その間、墜落・不時着・離陸トラブルなどなどに遭っていること(30代など、ほぼ2年に1回の割合!)。当時、飛行機に事故はつきものだったとはいえ、毎回よくぞ生還し、また空に戻っていったものだと、その不屈の精神に脱帽です。

サン=テグジュペリにとっては、「空を飛ぶこと」が生きることだったのでしょう。本書『夜間飛行』は、そんなことを改めて実感させる1冊です。

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ   
[ 1900 - 1944 ]    フランスの作家・飛行家。兵役で航空隊に志願、除隊後は民間航空業界に入る。26歳で作家デビュー。自らの飛行体験に基づく作品を発表した。主著に『夜間飛行』『人間の土地』など。『戦う操縦士』は、ヒトラー『我が闘争』に対する、「民主主義からの返答」として高く評価されている。
[訳者] 二木麻里    Futaki Mari

翻訳者。上智大学外国語学部卒。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。メディア社会思想論、芸術批評。訳書に『サイード音楽評論1、2』『死を生きながら イスラエル1993-2003』(共にみすず書房)、『ポパーとウィトゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い10分間の大激論の謎』(ちくま学芸文庫)、『夜間飛行』『オンディーヌ』(共に光文社古典新訳文庫)など。

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