友情、勇気、信頼、そして正義
8歳から80歳までの子どもに

飛ぶ教室

飛ぶ教室

ケストナー    
丘沢静也  訳   

「真夏にクリスマス物語を書くとは」とケストナー本人がこぼす場面から始まる。寄宿舎で暮らすマルティンは、なぜ1人になっても「泣いちゃだめ、絶対」と言い続けたのか。マティアス、ゼバスティアンら生徒たち、先生の正義さん、禁煙さんとの交流が胸に迫る。

作品

この作品こそ、いまの大人と、そして子供が読むにふさわしい極上の物語。何歳になっても読める=読みたくなる、大人同士、子供同士、大人と子供のすばらしく深い友情とユーモアが、忘れかけていた温かい人間の心を呼びさます。今回の新訳は初めて大人の目線をはっきりと導入し、軽やかで明晰な話として蘇らせた。訳者・丘沢静也は、長年ケストナーに惚れぬいてきたが、ここにその果実が結晶。

ジャーナリストとしても活躍したケストナー。ナチス政権下では批判的な論陣を張って秘密警察に逮捕され、作品は焚書、著作活動も全面禁止された。『飛ぶ教室』は、その圧制下で書かれた代表作のひとつ。ギムナジウムの寄宿舎で起こるたくさんの悲喜劇。


物語

孤独なジョニー、弱虫のウーリ、読書家ゼバスティアン、正義感の強いマルティン、いつも腹をすかせている腕っぷしの強いマティアス。同じ寄宿舎で生活する5人の少年が友情を育み、信頼を学び、大人たちに見守られながら成長していく感動的な物語。ドイツの国民作家ケストナーの代表作。

エーリヒ・ケストナー   
[ 1899 - 1974 ]    ドイツの作家。8歳から80歳までの「子ども」たちに愛され、軽快で、簡潔で、男らしく、ユーモアにみちた作品を書いた。『エミールと探偵たち』など児童物で有名だが、大人を意識した小説『ファービアン』やシニカルな詩も。「子どもの友」にして、大胆なモラリスト、そして辛辣な風刺家。
[訳者] 丘沢静也    Okazawa Shizuya
1947年生まれ。ドイツ文学者。東京都立大学名誉教授。著書に『下り坂では後ろ向きに』『マンネリズムのすすめ』『からだの教養』など。訳書に『ツァラトゥストラ』(ニーチェ)、『変身/掟の前で 他2編』『訴訟』(カフカ)、『論理哲学論考』(ヴィトゲンシュタイン)、『飛ぶ教室』(ケストナー)、『寄宿生テルレスの混乱』(ムージル)、『鏡のなかの鏡』(エンデ)、『数の悪魔』(エンツェンスベルガー)など。