翻訳は演奏に似ている。ピリオド奏法は、自分が慣れ親しんできた流儀を押し通すのではなく、相手の流儀をまず尊重する。演奏家の「私」ではなく、作曲家の「私」を優先させるのだ。(訳者)
家族の物語を虫の視点で描いた「変身」。もっともカフカ的な「掟の前で」。カフカがひと晩で書きあげ、カフカがカフカになった「判決」。そしてサルが「アカデミーで報告する」。カフカの傑作4編を、もっとも新しい〈史的批判版〉にもとづいた翻訳で贈る。
フランツ・カフカ |
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[ 1883 - 1924 ] チェコ生まれのユダヤ系。ドイツ語で書いた。「文学以後の文学」とも称される斬新な作風で、その作品は、なにが書かれているかはクリアにわかるが、それがどういう意味なのかは、さまざまな解釈を呼ぶ。おもしろいだけでなく、奥深いアクチュアリティをいまだに更新しつづけている不思議なカフカ文学は、文学を超えて、突出した魅力と存在感をもつ。代表作は、本書に収めた短編『判決』『変身』などのほかに、未完の小説『審判』『城』など。 |
[訳者] 丘沢静也 Okazawa Shizuya |
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1947年生まれ。ドイツ文学者。東京都立大学名誉教授。著書に『下り坂では後ろ向きに』『マンネリズムのすすめ』『からだの教養』など。訳書に『ツァラトゥストラ』(ニーチェ)、『変身/掟の前で 他2編』『訴訟』(カフカ)、『論理哲学論考』(ヴィトゲンシュタイン)、『飛ぶ教室』(ケストナー)、『寄宿生テルレスの混乱』(ムージル)、『鏡のなかの鏡』(エンデ)、『数の悪魔』(エンツェンスベルガー)など。 |