〈絶望〉〈不条理〉の“色眼鏡”を外せば原石の輝きが見えてくる。

ブレシアの飛行機/バケツの騎士

ブレシアの飛行機/バケツの騎士

カフカ    
丘沢静也  訳   
フランツ・カフカの38編+1 初飛行。小品たちが助走する。
物語
短編集収録の小品ほか、表題の2作と親友M・ブロートとの共作など、新聞・雑誌にだけ掲載されたものを含む38編+1を収録。そのうちの24編が「カフカがカフカになった」といわれる傑作『判決』以前の小品、初期の習作。若書き特有のぎこちなさの奥にある原石のカフカに出会える一冊。
内容
「本書に収められた習作を読むと、あっ、これは、あの未完の長編のための助走だったんだな、と気づく瞬間があります。青い文章をカフカも書いいたのだと思うと、なんだか親近感がわきませんか。カフカも一日にして成らず?」(訳者)。“2周目のカフカ・ファン”へ贈る小品集。
目次
『観察』に収められたもの
01 街道の子どもたち
02 田舎者をだますペテン師の仮面を剥ぐ
03 決心
04 山へハイキング
05 独身男の不幸
06 商人
07 ぼんやり外をながめる
08 帰り道
09 走り過ぎる男たち
10 乗客
11 ドレス
12 拒絕
13 アマチュア騎手たちのために考えてみる
14 通りに面した窓
15 樹木
16 不幸である
『田舎医者』に収められたもの
17 新しい弁護士
18 天井桟敷で
19 ある古文書
20 ジャッカルとアラブ人
21 鉱山の来客
22 隣り村
23 皇帝のメッセージ
24 家父の心配
25 11人の息子
26 兄弟殺し
『断食芸人』に収められたもの
27 最初の悩み
28 小さな女
新聞・雑誌にだけ掲載されたもの
29 女性の聖務日課書
30 祈る男と話をする
31 酔っ払いと話をする
32 ブレシアの飛行機
33 青春の小説
34 永眠した雑誌
35 『リヒャルトとザームエル』第1章(ブロートとの共作)
36 大きな騒音
37 マトラルハザ便り
38 バケツの騎士
 解説 丘沢 静也
 年譜
 訳者あとがき
フランツ・カフカ    Franz Kafka
[ 1883 - 1924 ]   

チェコのプラハ生まれ。父母はユダヤ人。法学博士号を取得後、労働者傷害保険協会に勤め、サラリーマン生活を送りながら執筆を続ける。生前はほとんど無名で、出版された作品もごくわずか。その作品は、何が書かれているか細部はクリアだが、全体としてどういう意味なのか、さまざまな解釈を呼ぶ。1917年に結核と診断され、’24年死去。作品の大部分は、死後、親友マックス・ブロートの編集によって出版され、世界的な評価を得る。代表作としては短編『判決』『変身』、未完の小説 『訴訟』『城』など。

[訳者] 丘沢静也    Okazawa Shizuya
1947年生まれ。ドイツ文学者。著書に『恋愛の授業』『下り坂では後ろ向きに』『マンネリズムのすすめ』『からだの教養』など。訳書に『ツァラトゥストラ』(ニーチェ)、『変身/掟の前で 他2編』『訴訟』(カフカ)、『論理哲学論考』(ヴィトゲンシュタイン)、『飛ぶ教室』(ケストナー)、『寄宿生テルレスの混乱』(ムージル)、『鏡のなかの鏡』(エンデ)、『数の悪魔』(エンツェンスベルガー)など。