赤か黒か! 運命はくるくる回る。
「ぼく」とルーレットに憑かれた人々の「偶然こそ真実」

賭博者

賭博者

ドストエフスキー    
亀山郁夫  訳   
将軍、激しい美女、 妙なフランス男、大金持ちの老婦人、イギリス貴族……
作品
主人公についてドストエフスキーは「たんなるギャンブラーではない」と述べる。主題はメタフィジックなレベルで、ルーレットに翻弄される人間の運命の面白おかしさ、といったほうがよいだろう。作者は、蕩尽のなかで自滅するロシア人に深い同情を寄せるいっぽう、ポリーナという女性を介し、拝金主義に抗するロシア人の精神性に深い愛着を示す。(訳者)
物語
ドイツの町ルーレッテンブルグ。賭博に魅入られた人々が今日もカジノに集まる。「ぼく」は将軍の義理の娘ポリーナに恋心を抱いている。彼女の縁戚、大金持ちの「おばあさん」の訃報を、一同はなぜか心待ちにしていて......。金に群がり、偶然に賭け、運命に嘲笑される人間の末路は?
目次
賭博者
 読書ガイド 亀山郁夫
 年譜
 訳者あとがき
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー    Ф. М. Достоевский
[ 1821 - 1881 ]    ロシア帝政末期の作家。60年の生涯のうちに、以下のような巨大な作品群を残した。『貧しき人々』『死の家の記録』『虐げられた人々』『地下室の手記』『罪と罰』『賭博者』『白痴』『悪霊』『永遠の夫』『未成年』そして『カラマーゾフの兄弟』。キリストを理想としながら、神か革命かの根元的な問いに引き裂かれ、ついに生命そのものへの信仰に至る。日本を含む世界の文学に、空前絶後の影響を与えた。
[訳者] 亀山郁夫    Kameyama Ikuo
1949年生まれ。名古屋外国語大学学長。東京外国語大学名誉教授。ドストエフスキー関連の研究のほか、ソ連・スターリン体制下の政治と芸術の関係をめぐる多くの著作がある。著書に『新カラマーゾフの兄弟』『謎とき「悪霊」』『磔のロシア』『熱狂とユーフォリア』『ドストエフスキー父殺しの文学』『「悪霊」神になりたかった男』『大審問官スターリン』『ドストエフスキー 共苦する力』ほか多数。訳書に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『白痴』『賭博者』(以上、ドストエフスキー)ほか。
書評
2020.02.16 読売新聞(評者:青木千恵さん)