崩壊するロシア、「偶然の家族」が 生んだ奇跡の物語、ここに完結。

未成年3

未成年3

ドストエフスキー    
亀山郁夫  訳   
〈ぼく〉の愛はどこに向かうのか。
混沌とペテン。誰が誰を裏切り、愛したか。
作品
『未成年』はここにいたって壮大なメロドラマ、スラップスティックの観を呈しはじめる。作者は老若男女を問わず、無秩序、混沌の泥沼に足をとられた登場人物たちの「復活」への道のりを丹念に描きこんだ。最晩年のドストエフスキーが到達した世界観、イデオロギー的側面が顔をのぞかせている。(訳者)
物語
ドタバタ劇は一気に加速する。〈ぼく〉アルカージーは、臨終の床にある戸籍上の父マカールと出会い、その数奇な放浪譚と信仰に清冽な衝撃を受け、「復活」に向かう。謎の手紙をめぐる陰謀、父ヴェルシーロフとの熱く長い会話。もつれる愛の行方、驚愕の結末……。 全3巻、完結。
目次
未成年3
第三部
 読書ガイド 亀山郁夫
 年譜
 訳者あとがき
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー    Ф. М. Достоевский
[ 1821 - 1881 ]    ロシア帝政末期の作家。60年の生涯のうちに、以下のような巨大な作品群を残した。『貧しき人々』『死の家の記録』『虐げられた人々』『地下室の手記』『罪と罰』『賭博者』『白痴』『悪霊』『永遠の夫』『未成年』そして『カラマーゾフの兄弟』。キリストを理想としながら、神か革命かの根元的な問いに引き裂かれ、ついに生命そのものへの信仰に至る。日本を含む世界の文学に、空前絶後の影響を与えた。
[訳者] 亀山郁夫    Kameyama Ikuo
1949年生まれ。名古屋外国語大学学長。東京外国語大学名誉教授。ドストエフスキー関連の研究のほか、ソ連・スターリン体制下の政治と芸術の関係をめぐる多くの著作がある。著書に『新カラマーゾフの兄弟』『謎とき「悪霊」』『磔のロシア』『熱狂とユーフォリア』『ドストエフスキー父殺しの文学』『「悪霊」神になりたかった男』『大審問官スターリン』『ドストエフスキー 共苦する力』ほか多数。訳書に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『白痴』『賭博者』(以上、ドストエフスキー)ほか。
書評
2023.02.22 朝日新聞    【文芸時評】家を出る者たち「偶然の家族」映り込む時代/鴻巣友季子さん