20世紀最大かつ最難関の哲学書を完全読破

存在と時間8

存在と時間8

ハイデガー    
中山 元  訳   
誕生と死、そして歴史から、〈現存在〉の「時間」を明らかにする。
作品
「将来」「既往」「瞬視」という新しい時間概念を提示し、〈死に臨む存在〉としての現存在の存在を考察した第7巻を受けて、この最終巻ではもう一方の「誕生」(始まり) から、そして歴史性との関連から、〈現存在〉が存在する根源的な時間を明らかにする。(第2篇第6章第83節まで)
内容
存在一般の意味を考えるにあたり、現存在を実存論的、存在論的に考察することで、 存在への問いの超越論的な地平として「時間」を説明してきた。この問いは「存在から時間へ」である。次の段階はこの道を逆に、「根源的時間から、存在の意味へ」とたどることである。この問いは、書かれなかった第二部、「時間から存在へ」という反転 (ケーレ) となるだろう。
目次
存在と時間8
  
第一部 時間性に基づいた現存在の解釈と、存在への問いの超越論的な地平としての時間の解明
第二篇 現存在と時間性
  • 第五章 時間性と歴史性
  • 第七二節 歴史の問題の実存論的かつ存在論的な提示    11
  • 第七三節 歴史の通俗的な了解と現存在の生起    30
  • 第七四節 歴史性の根本機構    45
  • 第七五節 現存在の歴史性と世界—歴史    62
  • 第七六節 現存在の歴史性に基づく歴史学の実存論的な起源    76
  • 第七七節 歴史性の問題についてのこれまでの考察の提示と、ディルタイの研究およびヨルク伯の理念との関連    93
  • 第六章 時間性と、通俗的な時間概念の起源としての時間内部性    114
  • 第七八節 これまでの現存在の時間的な分析の欠陥    114
  • 第七九節 現存在の時間性と時間についての配慮的な気遣い    121
  • 第八〇節 配慮的に気遣われた時間と時間内部性    139
  • 第八一節 時間内部性と通俗的な時間概念の発生    169
  • 第八二節 時間性、現存在、世界時間の実存論的かつ存在論的な連関を、時間と精神の関係についてのヘーゲルの見解と対比する試み    194
    • a ヘーゲルの時間概念    196
    • b 時間と精神の関係についてのヘーゲルの解釈    206
  • 第八三節 現存在の実存論的かつ時間的な分析論と、存在一般の意味への基礎存在論的な問い    222
 解説 中山元
  
第一部第二篇 現存在と時間性
第五章 時間性と歴史性 235
  • 第七二節
  • 第七三節
  • 第七四節
  • 第七五節
  • 第七六節
  • 第七七節

第七二節 歴史の問題の実存論的かつ存在論的な提示 235
存在一般と現存在の特異性(1085〜1086)/本書のこれまでの考察の欠陥(1087〜1088)/通俗的な見解の誤謬(1089〜1091)/新たな視点(1092)/生起について(1093〜1094)/歴史性の概念(1095〜1097)/歴史性の概念——第五章の構成(1097〜1103)/時間内部性の概念——第六章のテーマ(1101)

第七三節 歴史の通俗的な了解と現存在の生起 248
「歴史」という言葉の四つの語義(1104〜1110)/既往との関係を重視する概念(1106)/「由来としての歴史」の概念(1107)/人間集団の「変動と運命」を示す歴史の概念(1108)/伝承されたものを歴史とみなす概念と総括(1109〜1110)/現存在と歴史の関係(1111〜1112)/過去の優位(1113〜1114)/現存在と歴史性についての新たな問い(1115〜1119)

第七四節 歴史性の根本機構 259
先駆的な決意性に欠けているもの(1119〜1122)/宿命と運命(1122〜1124)/宿命の特徴(1123〜1130)/本来的な歴史性と非本来的な歴史性(1130〜1131)

第七五節 現存在の歴史性と世界—歴史 271
現存在の頽落の二つの側面と歴史性(1132〜1135)/「歴史」の伝統的な考え方(1133)/世界—歴史と世界—歴史的なもの(1133〜1134)/本来的な歴史性と非本来的な歴史性(1135〜1140)

第七六節 現存在の歴史性に基づく歴史学の実存論的な起源 279
歴史学の探求の課題(1141〜1143)/既存の歴史学の理念(1144〜1149)/不適切な歴史学の立場(1150〜1152)/ニーチェの三つの歴史学(1153〜1155)

第七七節 歴史性の問題についてのこれまでの考察の提示と、ディルタイの研究およびヨルク伯の理念との関連 289
ディルタイとヨルク伯の問題設定(1156〜1167)/ヨルク伯に欠けていた三つの洞察(1168〜1169)

第六章 時間性と、通俗的な時間概念の起源としての時間内部性 295
  • 第七八節
  • 第七九節
  • 第八〇節
  • 第八一節
  • 第八二節
  • 第八三節

第七八節 これまでの現存在の時間的な分析の欠陥 295
   「時間内部性」の考察の重要性(1170〜1173)/ヘーゲルの時間論と基礎存在論的な時間論との対比(1174〜1175)

第七九節 現存在の時間性と時間についての配慮的な気遣い 302
現存在の時間性(1176〜1177)/日付可能性(1178〜1179)/時間的な存在者としての現存在(1180〜1182)/伸び広がり(1183)/時間の穴(1184〜1187)

第八〇節 配慮的に気遣われた時間と時間内部性 316
世界時間の公共性(1189〜1191)/時計の登場とその役割(1192〜1195)/太陽と時計(1193〜1196)/世界時間の世界性(1197〜1198)/時計を使うということ(1199〜2000)/時計の四つの特徴(1199〜1202)/時間の測定尺度と眼前性(1203〜1205)/世界時間の超越性 世界時間の客観性と主観性(1208〜1211)

第八一節 時間内部性と通俗的な時間概念の発生 338
時間の存在論的な定義(1212)/今—時間の概念(1213)/「今—時間」による通俗的な時間概念の特徴(1214〜1219)/$世人【ひと】による誘惑(1220)/「今—時間」概念の蹉跌(1221〜1224)/根源的時間概念と通俗的な時間概念の違い(1225〜1226)

第八二節 時間性、現存在、世界時間の実存論的かつ存在論的な連関を、時間と精神の関係についてのヘーゲルの見解と対比する試み 356
ヘーゲルの時間概念の問題点(1227)

a ヘーゲルの時間概念 357
ヘーゲルの空間論の三つの特徴(1228〜1229)/空間の弁証法(1236〜1232)/空間から時間へ(1231〜1232)/ヘーゲルの時間論の四つの特徴(1232)/「今」の特殊性(1233〜1234)/ヘーゲルの時間概念の総括(1235〜1236)
b 時間と精神の関係についてのヘーゲルの解釈 367
精神の誕生(1237)/二つの否定性/否定性と自由(1238)/精神と時間(1239 〜1240)/ヘーゲルの時間論の欠陥(1241〜1244))

第八三節 現存在の実存論的かつ時間的な分析論と、存在一般の意味への基礎存在論的な問い 378
これまでの考察の総括と今後の課題(1245〜1248)/ハイデガーの蹉跌

 年譜
 訳者あとがき
マルティン・ハイデガー    Martin Heidegger
[ 1889 - 1976 ]    ドイツの哲学者。フライブルク大学で哲学を学び、フッサールの現象学に大きな影響を受ける。1923年マールブルク大学教授となり、1927年本書『存在と時間』を刊行。当時の哲学界に大きな衝撃を与えた。翌1928年フライブルク大学に戻り、フッサール後任の正教授となる。ナチス台頭期の1933年に学長に選任されるも1年で辞職。この時期の学長としての活動が、第二次大戦直後から多くの批判をうける。大戦後は一時的に教授活動を禁止された。1951年に復職、その後86歳で死去するまで旺盛な活動を続けた。
[訳者] 中山 元    Nakayama Gen
1949年生まれ。哲学者、翻訳家。主著に『思考のトポス』『フーコー入門』『はじめて読むフーコー』『思考の用語辞典』『賢者と羊飼い』『フーコー 生権力と統治性』『フーコー 思考の考古学』ほか。訳書に『自我論集』『エロス論集』『幻想の未来/文化への不満』『人はなぜ戦争をするのか』(以上、フロイト)、『パピエ・マシン(上・下)』(デリダ)、『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』『純粋理性批判』(カント)、『人間不平等起源論』『社会契約論/ジュネーヴ草稿』(共にルソー)、『職業としての政治 職業としての学問』『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(共にウェーバー)、『善悪の彼岸』『道徳の系譜学』(共にニーチェ)、『存在と時間』(ハイデガー)ほか多数。